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王の愚者  作者: クロワ
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61/106

61話「帰る場所」

「追ってくるぞ!」


王弟を奪われた。


大国軍が。


街道を追ってくる。


「スペード!」


「右だ!」


「見えている」


スペードが。


敵を止める。


ガレスが。


その横を抜ける。


「下がれ!」


「命令すんな!」


「なら死ぬな」


「うるせえ!」


剣戟が。


響く。


二人が。


交互に敵を止めながら。


少しずつ。


下がっていく。


◇


王弟が。


足を止める。


「俺にも」


「剣を」


王が。


振り返る。


「駄目だ」


「まだ戦える」


「まともに」


「立ててもいないだろ」


「…………」


後ろから。


ガレスの声。


「殿下!」


王弟が。


振り返る。


「今度くらい」


「俺たちに任せろ!」


ガレスが。


敵の剣を弾く。


「お前は」


「大人しく逃げてろ!」


「…………」


王弟が。


拳を握る。


そして。


再び走り出す。


◇


「ジョーカー!」


「はい」


ジョーカーが。


後ろを見る。


「そろそろですね」


追撃隊が。


森へ入る。


「では」


「少々」


「帰り道を」


「散らかしましょう」


合図。


ドンッ!!


大木が。


街道へ倒れる。


「止まれ!」


さらに。


煙が広がる。


追撃隊の姿が。


見えなくなった。


「今のうちです」


一行は。


森の奥へ消える。


◇


しばらくして。


戦いの音も。


聞こえなくなった。


王弟が。


木にもたれる。


「…………」


目の前には。


兄。


「兄上」


「何だ」


「なぜ」


「私を助けた」


「…………」


「私は」


「国を奪った」


「ああ」


「あなたを」


「殺そうともした」


「ああ」


「多くの兵も」


「死なせた」


「…………」


王が。


王弟を見る。


「だからだ」


「……?」


「死んで」


「終わりにはさせない」


「…………」


王弟が。


俯く。


しばらく。


沈黙が続く。


「兄上」


「何だ」


「これから」


「私は」


「どうすればいい」


「…………」


王が。


歩き出す。


「それくらい」


「自分で考えろ」


「…………」


「お前が」


「何を間違えたのか」


「これから」


「何をするのか」


王が。


振り返る。


「今度は」


「自分で決めろ」


「…………」


王弟が。


兄を見る。


そして。


ゆっくりと。


立ち上がる。


「兄上」


「何だ」


「帰ろう」


「…………」


「ああ」


二人が。


同じ道を。


歩き出す。


王国へ。


帰るために。

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