61話「帰る場所」
「追ってくるぞ!」
王弟を奪われた。
大国軍が。
街道を追ってくる。
「スペード!」
「右だ!」
「見えている」
スペードが。
敵を止める。
ガレスが。
その横を抜ける。
「下がれ!」
「命令すんな!」
「なら死ぬな」
「うるせえ!」
剣戟が。
響く。
二人が。
交互に敵を止めながら。
少しずつ。
下がっていく。
◇
王弟が。
足を止める。
「俺にも」
「剣を」
王が。
振り返る。
「駄目だ」
「まだ戦える」
「まともに」
「立ててもいないだろ」
「…………」
後ろから。
ガレスの声。
「殿下!」
王弟が。
振り返る。
「今度くらい」
「俺たちに任せろ!」
ガレスが。
敵の剣を弾く。
「お前は」
「大人しく逃げてろ!」
「…………」
王弟が。
拳を握る。
そして。
再び走り出す。
◇
「ジョーカー!」
「はい」
ジョーカーが。
後ろを見る。
「そろそろですね」
追撃隊が。
森へ入る。
「では」
「少々」
「帰り道を」
「散らかしましょう」
合図。
ドンッ!!
大木が。
街道へ倒れる。
「止まれ!」
さらに。
煙が広がる。
追撃隊の姿が。
見えなくなった。
「今のうちです」
一行は。
森の奥へ消える。
◇
しばらくして。
戦いの音も。
聞こえなくなった。
王弟が。
木にもたれる。
「…………」
目の前には。
兄。
「兄上」
「何だ」
「なぜ」
「私を助けた」
「…………」
「私は」
「国を奪った」
「ああ」
「あなたを」
「殺そうともした」
「ああ」
「多くの兵も」
「死なせた」
「…………」
王が。
王弟を見る。
「だからだ」
「……?」
「死んで」
「終わりにはさせない」
「…………」
王弟が。
俯く。
しばらく。
沈黙が続く。
「兄上」
「何だ」
「これから」
「私は」
「どうすればいい」
「…………」
王が。
歩き出す。
「それくらい」
「自分で考えろ」
「…………」
「お前が」
「何を間違えたのか」
「これから」
「何をするのか」
王が。
振り返る。
「今度は」
「自分で決めろ」
「…………」
王弟が。
兄を見る。
そして。
ゆっくりと。
立ち上がる。
「兄上」
「何だ」
「帰ろう」
「…………」
「ああ」
二人が。
同じ道を。
歩き出す。
王国へ。
帰るために。




