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王の愚者  作者: クロワ
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60/105

60話「迎え」

森の中。


王弟を乗せた馬車が。


街道を進む。


「…………」


護送兵が。


周囲を警戒する。


その時。


ヒュッ。


一本の矢が。


兵の足元へ刺さる。


「……!」


次の瞬間。


無数の矢が。


森から降り注いだ。


「敵襲!!」


「盾を構えろ!」


「馬車を守れ!」


馬が暴れる。


隊列が。


崩れる。


「どこからだ!」


「森だ!」


「左右を警戒しろ!」


その混乱の中。


地面が。


揺れ始める。


ドドドドド――


「…………?」


一人の兵が。


前を見る。


森の奥から。


兵が。


次々と現れる。


その先頭。


大剣を担いだ男。


「…………!」


「ガレスだ!」


「ガレス軍だ!!」


ガレスが。


剣を抜く。


「行くぞ!!」


「殿下を」


「取り返す!!」


「おおおおお!!」


ガレス軍が。


一斉に突撃する。



「前方へ兵を回せ!」


「ガレスを馬車へ近づけるな!」


護送兵たちが。


次々と。


前方へ集まる。


ガレスが。


その中心へ。


飛び込む。


「止めろ!!」


「囲め!」


一人。


二人。


ガレスの剣が。


兵を薙ぎ払う。


さらに。


兵が集まる。


「もっと回せ!」


「ここを抜かれたら馬車まで来るぞ!」


「…………」


ガレスが。


笑う。


「そうだ」


剣を。


構える。


「もっと来い」



街道の反対側。


森の中。


ジョーカーが。


戦場を見る。


「随分と」


「人気者ですね」


スペードが。


剣を抜く。


「頃合いだ」


「ええ」


ジョーカーが。


馬車を見る。


護衛の多くは。


ガレス軍へ向いている。


残っている兵は。


わずか。


「では」


「参りましょう」


スペードが。


手を上げる。


「行くぞ」


森から。


スペード軍が。


飛び出す。


「なっ――」


「反対側にも敵!」


「スペード軍です!!」


「馬車を守れ!」


スペードが。


先頭を走る。


剣が。


護衛の一人を弾く。


「王!」


「ああ!」


王が。


その横を抜ける。


「ジョーカー!」


「はいはい」


「私も」


「走るのですか」


「早く来い!」


「王使いの荒い」


「国王陛下ですね」



馬車の中。


王弟が。


顔を上げる。


外から。


聞こえてくる。


怒号。


剣戟。


そして。


「ガレスを止めろ!!」


「…………!」


王弟が。


立ち上がる。


「ガレス……?」


続いて。


「スペード軍だ!」


「反対側から来るぞ!」


「…………」


王弟の表情が。


変わる。


「なぜ……」



「馬車を動かせ!」


御者が。


手綱を握る。


だが。


目の前へ。


スペードが。


降り立つ。


「悪いが」


「ここまでだ」


「スペード……!」


周囲の兵が。


スペードへ向かう。


「王!」


「行け!」


「ああ!」


王が。


馬車へ走る。


一人の兵が。


立ちはだかる。


その足元へ。


何かが転がる。


「……?」


ボンッ!


煙が。


広がる。


「なっ――!」


煙の向こうから。


ジョーカー。


「申し訳ありません」


「少々」


「道をお借りします」


「行け!」


王が。


煙を抜ける。


馬車へ。


手をかける。


扉を。


開いた。


「…………」


王弟が。


顔を上げる。


「…………」


二人の目が。


合う。


「……兄上?」


「ああ」


王弟が。


兄を見る。


「なぜ……」


「私は」


「あなたから」


「国を奪った」


「知っている」


「殺そうともした」


「知っている」


「なら」


「なぜ……」


「…………」


王が。


手を伸ばす。


「話は」


「まずここを抜けてからだ」


「…………」


王弟が。


差し出された手を見る。


外では。


ガレスが。


大国兵を引きつけている。


スペードが。


退路を守っている。


ジョーカーが。


こちらを見ている。


「…………」


王弟が。


ゆっくりと。


手を伸ばす。


その手を。


兄が。


掴んだ。


「行くぞ」


「…………」


「ああ」


王弟が。


馬車を降りる。



遠く。


ガレスが。


それを見る。


「…………」


ニッと。


笑う。


「よし」


剣を。


振り抜く。


「殿下は」


「返してもらった!」


「全軍!」


「退くぞ!!」


スペードも。


剣を構えたまま。


後退する。


「退路を開けろ!」


「はっ!」


王と。


王弟が。


並んで走る。


その後ろを。


ジョーカーが追う。


王弟が。


兄の背中を見る。


「…………」


聞きたいことは。


いくらでもある。


だが。


今は。


王弟も。


剣の代わりに。


兄の手を。


強く握った。

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