59話「生かす理由」
「処刑を」
「中止しろ」
「……は?」
側近が。
将軍を見る。
「王弟は」
「殺すな」
「しかし」
「処刑は明日です」
「だからだ」
「…………」
将軍が。
机の上の密書を見る。
『処刑には手を出すな』
「王弟が死んで」
「得をするのは」
「誰だ?」
「…………」
「前王……」
「王弟は」
「兄から国を奪った」
「その王弟が死ねば」
「邪魔者が」
「一人消える」
「…………」
将軍が。
密書を置く。
「敵の望むことを」
「してやる必要はない」
◇
将軍が。
地図を見る。
「王弟を」
「王都へ移送する」
「王都へ?」
「ああ」
「前王が」
「本当に王都を狙うなら」
「弟は使える」
「護衛は?」
「必要な兵だけ残せ」
将軍の指が。
王都へ向く。
「動かせる兵は」
「すべて王都へ回す」
「…………」
「王弟一人と」
「王都」
「どちらを守るべきかなど」
「考えるまでもない」
「はっ」
◇
翌朝。
要塞の門が。
開く。
王弟を乗せた。
馬車が出る。
その周囲を。
護送兵が固める。
王弟が。
窓の外を見る。
「…………」
兵に尋ねる。
「処刑は?」
「中止です」
「…………」
「どこへ行く」
「王都です」
王弟が。
少しだけ。
眉をひそめる。
「王都……?」
馬車が。
動き出す。
◇
森の中。
一人の兵が。
駆けてくる。
「出ました」
ガレスが。
立ち上がる。
「殿下は?」
「馬車の中です」
「護衛は」
「およそ八十」
「…………」
ガレスが。
剣を担ぐ。
「行くぞ」
「まだです」
ジョーカーが。
止める。
「またかよ」
ジョーカーが。
街道の先を見る。
「ここでは」
「広すぎます」
その先。
道は。
森の中へ入り。
細くなる。
スペードが。
口を開く。
「あそこか」
「はい」
「前後を」
「分けられます」
ガレスが。
笑う。
「なら」
「前は俺がやる」
スペードが。
見る。
「好きにしろ」
「お前は?」
「後ろを止める」
「…………」
ガレスが。
笑う。
「久しぶりだな」
「何がだ」
「お前と」
「同じ敵を斬るのは」
「…………」
「そうだな」
◇
王が。
街道を見る。
遠くに。
馬車が見える。
「…………」
「本当に」
「ここまで来たな」
ジョーカーが。
笑う。
「大国の将軍は」
「賢い方ですから」
「王都と」
「王弟殿下」
「どちらが大切か」
「正しく」
「選んでくださいました」
「…………」
王が。
ジョーカーを見る。
「性格が悪いな」
「お褒めいただき」
「光栄です」
馬車が。
森へ入る。
ジョーカーが。
手を上げる。
スペード軍。
ガレス軍。
選ばれた兵たちが。
静かに。
武器を構える。
ガレスが。
剣を抜く。
スペードも。
続く。
王が。
前を見る。
その先に。
弟がいる。
「では」
「王子様を」
「お迎えに行きましょう」




