58話「確かめた嘘」
夜。
大国の王都へ続く。
街道。
数騎の偵察兵が。
馬を走らせていた。
「…………」
「何もいないな」
「もう少し先まで行く」
森へ。
入った時だった。
「待て」
木々の向こう。
旗が。
揺れている。
スペードの旗。
そして。
王の旗。
「…………!」
「本当にいた」
「戻るぞ」
その瞬間。
ヒュッ。
矢が。
飛んできた。
「敵襲!」
森の中から。
兵士たちが。
姿を現す。
「スペード軍だ!」
「戦うな!」
「戻れ!」
偵察隊が。
馬を走らせる。
だが。
別の方向からも。
矢が飛ぶ。
「こっちにもいる!」
「抜けろ!」
数騎が。
森を抜ける。
その後を。
スペード軍は。
追わなかった。
◇
「将軍!」
傷を負った兵が。
駆け込んでくる。
「報告しろ」
「スペード軍を」
「確認しました」
「間違いないか?」
「はい」
「王の旗も」
「確認しました」
「兵数は?」
「分かりません」
「森の各所に」
「伏兵が」
「…………」
「その先は?」
「確認できませんでした」
「進もうとしたところ」
「襲撃を受け」
「我々も」
「数名しか戻れておりません」
「…………」
将軍が。
地図を見る。
「追撃は?」
「ありませんでした」
「…………」
将軍の指が。
偵察隊の進んだ場所で。
止まる。
「妙だな」
「は?」
「殺す気なら」
「追えばいい」
「…………」
「奴らは」
「お前たちを」
「倒したかったんじゃない」
将軍の指が。
その先へ。
動く。
「ここから先へ」
「進ませたくなかった」
「…………」
側近が。
地図を見る。
「何かを」
「隠している?」
「あるいは」
将軍の目が。
細くなる。
「何かを」
「待っている」
「…………」
「ガレス軍でしょうか」
「分からん」
「だが」
「奴の軍は」
「まだ見つかっていない」
「…………」
将軍が。
地図の王都を見る。
◇
「将軍」
一枚の。
密書が届く。
「どこで見つけた」
「王国側の者が」
「所持していました」
将軍が。
紙を開く。
『軍が到着次第』
『東門を開く』
『準備は整っている』
「…………」
側近が。
息を呑む。
「王都に」
「内通者が……?」
「偽物かもしれん」
「では」
「無視しますか?」
「…………」
将軍が。
地図を見る。
「スペード軍だけなら」
「王都は落ちん」
「だが」
「城門が」
「内側から開くなら」
「話は別だ」
「…………」
「さらに」
「ガレス軍まで」
「合流しているとすれば」
将軍が。
しばらく。
黙る。
「…………」
「兵を」
「王都へ回せ」
「ですが」
「明日は」
「王弟の処刑が」
「こちらにも」
「兵は残す」
「…………」
「だが」
「最悪を」
「無視するわけにはいかん」
「はっ!」
◇
深夜。
「将軍」
「今度は何だ」
「王国兵から」
「押収したものです」
一通の。
密書。
将軍が。
開く。
『予定に変更なし』
『処刑には手を出すな』
『我らはこのまま東へ進む』
「…………」
将軍の目が。
止まる。
もう一度。
読み返す。
王弟は。
兄から。
国を奪った。
その兄は。
今。
王弟を助けず。
王都へ向かっている。
「…………」
将軍が。
密書を置く。
そして。
王弟の牢へ。
目を向ける。
「なるほど」
「将軍?」
「…………」
「そういうことか」




