55話「望んだ結末」
戦場。
ガレス軍は。
ようやく。
敵の包囲を抜けていた。
「将軍!」
一騎の伝令が。
駆け込んでくる。
「本陣が……」
「どうした」
「陥落しました」
「…………」
「王弟殿下も」
「敵に捕らえられたと」
「…………」
ガレスが。
足を止める。
「生きてんのか」
「はい」
「捕虜として」
「連行されたようです」
「…………」
ガレスの拳が。
強く握られる。
「将軍」
「追いますか?」
「…………」
ガレスが。
振り返る。
傷ついた兵。
肩を借りなければ。
歩けない者。
仲間の遺体を。
背負う者。
「……退くぞ」
「…………」
「全軍」
「撤退だ」
ガレスが。
遠ざかる大国軍を見る。
「死ぬなよ」
「…………」
「必ず」
「迎えに行く」
◇
「追撃しますか?」
大国軍。
将軍は。
撤退する王国軍を見ていた。
「いや」
「こちらも」
「十分に兵を失った」
「追う必要はない」
将軍が。
視線を移す。
その先には。
意識を失った。
王弟の姿。
「目的は」
「果たした」
◇
数日後。
王都。
「号外!」
「王国軍敗北!」
「王弟殿下が」
「大国軍の捕虜に!」
新聞を手に。
人々が騒いでいた。
「やっぱり」
「無謀だったんだ」
「大国に」
「勝てるわけないだろ」
「誰が」
「戦争なんて始めたんだ」
「王弟だろ」
「国を滅ぼす気か!」
少し前まで。
同じ広場で。
「進軍を!」
「大国にも勝てる!」
そう叫んでいた。
人々だった。
「…………」
王が。
その光景を見る。
「少し前まで」
「進めと」
「言っていなかったか?」
「ええ」
「なら」
「なぜ……」
ジョーカーが。
笑う。
「民は」
「戦争を望んでいたのでは」
「ありません」
「…………」
「勝利を」
「望んでいたのですよ」
「…………」
「負ける戦争まで」
「望んだ覚えは」
「ないのでしょう」
「…………」
王は。
何も言えなかった。
◇
その時。
広場の向こうから。
声が響いた。
「号外!」
「号外だ!」
人々が。
再び集まる。
「大国より」
「正式発表!」
「捕虜となった」
「王弟殿下の――」
「公開処刑が」
「決定した!」
「…………」
王の顔から。
表情が消えた。
ジョーカーも。
笑っていない。
「いつだ」
「三日後!」
「国境の要塞都市にて!」
「…………」
王が。
新聞を握りしめる。
「行くぞ」
「どちらへ?」
「決まっている」
王が。
国境の方角を見る。
「弟を」
「連れ戻す」




