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王の愚者  作者: クロワ
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55/105

55話「望んだ結末」

戦場。


 ガレス軍は。


 ようやく。


 敵の包囲を抜けていた。


「将軍!」


 一騎の伝令が。


 駆け込んでくる。


「本陣が……」


「どうした」


「陥落しました」


「…………」


「王弟殿下も」


「敵に捕らえられたと」


「…………」


 ガレスが。


 足を止める。


「生きてんのか」


「はい」


「捕虜として」


「連行されたようです」


「…………」


 ガレスの拳が。


 強く握られる。


「将軍」


「追いますか?」


「…………」


 ガレスが。


 振り返る。


 傷ついた兵。


 肩を借りなければ。


 歩けない者。


 仲間の遺体を。


 背負う者。


「……退くぞ」


「…………」


「全軍」


「撤退だ」


 ガレスが。


 遠ざかる大国軍を見る。


「死ぬなよ」


「…………」


「必ず」


「迎えに行く」


 ◇


「追撃しますか?」


 大国軍。


 将軍は。


 撤退する王国軍を見ていた。


「いや」


「こちらも」


「十分に兵を失った」


「追う必要はない」


 将軍が。


 視線を移す。


 その先には。


 意識を失った。


 王弟の姿。


「目的は」


「果たした」


 ◇


 数日後。


 王都。


「号外!」


「王国軍敗北!」


「王弟殿下が」


「大国軍の捕虜に!」


 新聞を手に。


 人々が騒いでいた。


「やっぱり」


「無謀だったんだ」


「大国に」


「勝てるわけないだろ」


「誰が」


「戦争なんて始めたんだ」


「王弟だろ」


「国を滅ぼす気か!」


 少し前まで。


 同じ広場で。


「進軍を!」


「大国にも勝てる!」


 そう叫んでいた。


 人々だった。


「…………」


 王が。


 その光景を見る。


「少し前まで」


「進めと」


「言っていなかったか?」


「ええ」


「なら」


「なぜ……」


 ジョーカーが。


 笑う。


「民は」


「戦争を望んでいたのでは」


「ありません」


「…………」


「勝利を」


「望んでいたのですよ」


「…………」


「負ける戦争まで」


「望んだ覚えは」


「ないのでしょう」


「…………」


 王は。


 何も言えなかった。


 ◇


 その時。


 広場の向こうから。


 声が響いた。


「号外!」


「号外だ!」


 人々が。


 再び集まる。


「大国より」


「正式発表!」


「捕虜となった」


「王弟殿下の――」


「公開処刑が」


「決定した!」


「…………」


 王の顔から。


 表情が消えた。


 ジョーカーも。


 笑っていない。


「いつだ」


「三日後!」


「国境の要塞都市にて!」


「…………」


 王が。


 新聞を握りしめる。


「行くぞ」


「どちらへ?」


「決まっている」


 王が。


 国境の方角を見る。


「弟を」


「連れ戻す」

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