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王の愚者  作者: クロワ
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54/108

54話「最後まで」

王国軍本陣。


「敵襲!」


「後方からです!」


 大国軍が。


 一気に。


 本陣へ雪崩れ込んだ。


「迎え撃て!」


 王国兵が。


 剣を抜く。


 激突。


 怒号と。


 金属音が。


 本陣を埋め尽くした。


 王弟も。


 剣を抜く。


 迫る敵兵の一撃を。


 受け止める。


 弾き。


 斬り伏せた。


「押し返せ!」


 だが。


 敵は。


 次々と押し寄せる。


 一人。


 また一人。


 王国兵が倒れる。


 王弟たちは。


 少しずつ。


 本陣中央へ。


 追い詰められていった。


 ◇


「どけえええ!」


 ガレスが。


 敵兵を薙ぎ倒す。


「本陣へ戻るぞ!」


 だが。


 行く先には。


 大国軍。


 右も。


 左も。


 塞がれている。


 一人倒せば。


 次が来る。


 二人倒しても。


 また塞がれる。


「チッ……!」


 ガレスが。


 武器を振り抜く。


 そして。


 気づいた。


 敵は。


 自分を倒そうとしているのではない。


 ここから。


 動かさないために。


 戦っている。


「最初から……」


「そこまで込みかよ」


 ◇


 王国本陣。


 王弟たちは。


 完全に包囲されていた。


「止まれ」


 声が響く。


 大国兵が。


 剣を止めた。


 その間を。


 将軍が。


 歩いてくる。


「王弟殿下」


「武器を置け」


「降伏するなら」


「残った兵の命は」


「保証する」


「…………」


 王弟は。


 周囲を見る。


 傷ついた兵。


 血に濡れた近衛兵。


 そして。


 地面に倒れた。


 多くの仲間たち。


「聞いたな」


 王弟が。


 兵たちを見る。


「武器を置け」


「殿下も」


「降伏されるのですか?」


「いや」


 王弟が。


 剣を握り直した。


「この戦争を」


「始めたのは私だ」


「ここまで」


「多くの者が」


「戦場で散った」


「その者たちのためにも」


「私は」


「一人でも」


「最後まで戦う」


「お前たちは」


「もう十分だ」


「行け」


「…………」


 誰も。


 動かなかった。


 一人。


 また一人。


 近衛兵たちが。


 王弟の隣へ並ぶ。


「…………」


 王弟は。


 何も言わない。


 ただ。


 剣を構えた。


 近衛兵たちも。


 それに続く。


 大国の将軍が。


 静かに。


 剣を上げた。


「進め」


 ◇


「おおおおお!」


 王弟が。


 敵軍へ飛び込む。


 一人。


 斬り倒す。


 返す剣で。


 もう一人。


 近衛兵たちも。


 その後に続く。


 だが。


 数が違う。


 一人。


 また一人。


 王弟の隣から。


 兵が消えていく。


「殿下!」


 声に。


 振り返る。


 見慣れた近衛兵が。


 王弟の目の前で。


 倒れた。


「…………」


 名前を。


 知っている。


 顔も。


 知っている。


 これまで。


 報告書で見てきた。


 死者という数字。


 その一人一人にも。


 名前があった。


「…………!」


 王弟が。


 再び。


 剣を振る。


 一人。


 また一人。


 それでも。


 敵は減らない。


 やがて。


 王弟の周囲から。


 味方の声が。


 消えた。


「…………」


 立っているのは。


 王弟。


 一人。


 鎧は裂け。


 全身から。


 血が流れている。


 呼吸も。


 荒い。


 それでも。


 剣を構えた。


「来い」


 大国兵が。


 一斉に。


 襲いかかる。


 王弟が。


 一人を斬る。


 もう一人の剣を。


 受け止める。


 だが。


 背後から。


 腕を掴まれた。


「離せ!」


 振りほどく。


 別の兵が。


 身体へ飛びつく。


 一人。


 二人。


 三人。


 それでも。


 王弟は。


 剣を離さない。


 やがて。


 何人もの兵に。


 地面へ。


 押さえつけられた。


 剣が。


 手を離れる。


「…………」


 王弟が。


 手を伸ばす。


 あと少し。


 指先が。


 剣へ届く。


 だが。


 その腕を。


 踏みつけられた。


「……まだ」


 王弟が。


 顔を上げる。


「終わって……」


 声が。


 途切れた。


 視界が。


 ゆっくりと。


 暗くなる。


 最後に見えたのは。


 地面に転がる。


 自分の剣だった。



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