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王の愚者  作者: クロワ
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52/109

52話「剣を置くもの」

国境。


 丘の向こうから。


 大国軍が姿を現した。


 歩兵。


 騎兵。


 攻城兵器。


 その列は。


 どこまでも続いている。


「…………多いな」


 王国兵の一人が呟く。


「だから何だ」


「俺たちは」


「ここまで負けてない」


「…………」


「今回も勝つ」


 そう言いながら。


 誰も。


 目の前の軍勢から。


 目を離せなかった。


 ◇


 国境を挟み。


 王弟と。


 大国の将軍が向かい合う。


「見事な軍だ」


「以前の王国とは」


「別物らしい」


「なら」


「我々の戦争に」


「口を出さないでもらいたい」


「だからこそだ」


 将軍が。


 王弟を見る。


「弱い国が勝っても」


「地図は変わらない」


「だが」


「勝ち続ける国は」


「周囲の地図を変える」


「我々に」


「貴国を脅かす意思はない」


「…………」


「それを」


「信じろと?」


「…………」


 王弟は。


 答えなかった。


 相手が。


 いつ剣を向けてくるか。


 分からない。


 だから。


 力が必要だ。


 それは。


 王弟自身が。


 ずっと語ってきたことだった。


 ◇


 その頃。


 王たちも。


 国境近くへ到着していた。


 丘の上から。


 二つの軍を眺める。


「どちらも」


「戦争をしたくないのだろう?」


「ええ」


「なのに」


「なぜ」


「こんなことになった?」


「簡単ですよ」


 ジョーカーが。


 両軍を見る。


「誰も」


「先に剣を置きたくないからです」


「なぜだ?」


「平和を」


「望んでおりますので」


「…………」


「丸腰では」


「危険でしょう?」


「…………」


 王は。


 何も言えなかった。


「陛下」


 スペードが。


 両軍を見ながら呟く。


「ここは」


「危険です」


「まだ」


「戦争は始まっていないぞ」


「だからです」


「…………」


「これだけの兵が」


「武器を持って」


「向かい合っている」


「誰か一人が」


「間違えれば」


「始まります」


 ◇


 夜。


 国境を挟んで。


 二つの軍が野営していた。


 両軍には。


 命令が出ている。


 攻撃するな。


 挑発するな。


 決して。


 先に手を出すな。


 それでも。


 暗闇の中。


 一人の王国兵が。


 人影を見つけた。


「止まれ!」


 大国の兵士だった。


「それ以上」


「近づくな!」


 だが。


 相手は止まらない。


 王国兵が。


 弓を構える。


 大国兵も。


 武器へ手を伸ばした。


「止まれ!」


 弦が。


 ゆっくりと。


 引かれる。


 誰も。


 戦争を。


 始めたいわけではなかった。


 ただ。


 誰も。


 先に剣を。


 置けなかった。

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