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王の愚者  作者: クロワ
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48/108

48話「誰のための王」

北部。


 王たちが立ち寄った町でも。


 戦争の話でもちきりだった。


「このまま進め!」


「敵の王都まで行けばいい!」


「今止める方がもったいない!」


「…………」


 王は。


 騒ぐ人々を見ていた。


「余は」


「民に慕われる王に」


「なりたいと思っていた」


「存じております」


「民の声を聞き」


「民の望む国を作る」


「それが」


「良い王だと思っていた」


「…………」


「だが」


「民が戦争を望んだ時は?」


 ジョーカーが。


 少し考える。


「困りましたね」


「何がだ」


「民の声を聞く王が」


「良い王なのでしたら」


「…………」


「民は」


「いつでも正しくなければ」


「困ります」


「民が間違っていると?」


「分かりません」


「ただ」


 ジョーカーが笑う。


「民の言うことを」


「何でも聞くのでしたら」


「王など必要ありません」


「…………」


「多数決でも」


「置いておけばよろしいかと」


 ◇


 町外れ。


 一人の男が。


 王に言った。


「戦争は」


「続けるべきだ」


「家族はいないのか?」


「息子がいる」


「今」


「戦場にいる」


「…………」


「死ぬかもしれないぞ」


「分かってる」


「それでもか?」


 男は。


 静かに頷いた。


「あいつが戦うことで」


「あいつの子供が」


「戦わなくて済むなら」


「俺は」


「止められねえよ」


「…………」


 王は。


 何も言えなかった。


 その言葉は。


 王弟の言葉と。


 よく似ていた。


 ◇


「スペード」


「はい」


「民が戦争を望めば」


「王も従うべきだと思うか?」


「…………」


「民の声を聞くことは」


「必要でしょう」


「ですが」


「命令を下す者は」


「その結果まで」


「引き受けなければなりません」


「…………」


「だからこそ」


「最後に決めるのは」


「王なのではありませんか」


 ◇


 夜。


 焚き火を囲みながら。


 王が呟いた。


「民に好かれることと」


「民のためになることは」


「同じではないらしい」


「ようやく」


「王らしくなってきましたね」


「皮肉か?」


「もちろんです」


「…………」


 王は。


 炎を見る。


「なら」


「民が望む道と」


「王が正しいと思う道が」


「違った時」


「王は」


「どちらを選ぶべきなのだろうな」


 ジョーカーは。


 答えなかった。


 ◇


 同じ頃。


 王都。


「進軍を!」


「戦争を続けろ!」


「王弟殿下万歳!」


 窓の外から。


 民衆の声が響いていた。


「…………」


 王弟は。


 一人。


 その声を聞いていた。


 戦争を始めた目的は。


 すでに達成している。


 それでも。


 民は。


 その先を望んでいる。


「民が望むなら」


「進むべきなのか……」


 ◇


 北部では。


 兄が。


 炎を見つめていた。


 王都では。


 弟が。


 歓声を聞いていた。


 二人が歩いてきた道は。


 違う。


 それでも。


 今。


 二人は。


 同じ問いの前にいた。


 民の望む道を。


 進むのが王なのか。


 それとも。


 民が望んでも。


 止めるのが王なのか。


 兄も。


 弟も。


 まだ。


 答えを知らなかった。


 王とは。


 誰のために。


 王であるべきなのか。



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