48話「誰のための王」
北部。
王たちが立ち寄った町でも。
戦争の話でもちきりだった。
「このまま進め!」
「敵の王都まで行けばいい!」
「今止める方がもったいない!」
「…………」
王は。
騒ぐ人々を見ていた。
「余は」
「民に慕われる王に」
「なりたいと思っていた」
「存じております」
「民の声を聞き」
「民の望む国を作る」
「それが」
「良い王だと思っていた」
「…………」
「だが」
「民が戦争を望んだ時は?」
ジョーカーが。
少し考える。
「困りましたね」
「何がだ」
「民の声を聞く王が」
「良い王なのでしたら」
「…………」
「民は」
「いつでも正しくなければ」
「困ります」
「民が間違っていると?」
「分かりません」
「ただ」
ジョーカーが笑う。
「民の言うことを」
「何でも聞くのでしたら」
「王など必要ありません」
「…………」
「多数決でも」
「置いておけばよろしいかと」
◇
町外れ。
一人の男が。
王に言った。
「戦争は」
「続けるべきだ」
「家族はいないのか?」
「息子がいる」
「今」
「戦場にいる」
「…………」
「死ぬかもしれないぞ」
「分かってる」
「それでもか?」
男は。
静かに頷いた。
「あいつが戦うことで」
「あいつの子供が」
「戦わなくて済むなら」
「俺は」
「止められねえよ」
「…………」
王は。
何も言えなかった。
その言葉は。
王弟の言葉と。
よく似ていた。
◇
「スペード」
「はい」
「民が戦争を望めば」
「王も従うべきだと思うか?」
「…………」
「民の声を聞くことは」
「必要でしょう」
「ですが」
「命令を下す者は」
「その結果まで」
「引き受けなければなりません」
「…………」
「だからこそ」
「最後に決めるのは」
「王なのではありませんか」
◇
夜。
焚き火を囲みながら。
王が呟いた。
「民に好かれることと」
「民のためになることは」
「同じではないらしい」
「ようやく」
「王らしくなってきましたね」
「皮肉か?」
「もちろんです」
「…………」
王は。
炎を見る。
「なら」
「民が望む道と」
「王が正しいと思う道が」
「違った時」
「王は」
「どちらを選ぶべきなのだろうな」
ジョーカーは。
答えなかった。
◇
同じ頃。
王都。
「進軍を!」
「戦争を続けろ!」
「王弟殿下万歳!」
窓の外から。
民衆の声が響いていた。
「…………」
王弟は。
一人。
その声を聞いていた。
戦争を始めた目的は。
すでに達成している。
それでも。
民は。
その先を望んでいる。
「民が望むなら」
「進むべきなのか……」
◇
北部では。
兄が。
炎を見つめていた。
王都では。
弟が。
歓声を聞いていた。
二人が歩いてきた道は。
違う。
それでも。
今。
二人は。
同じ問いの前にいた。
民の望む道を。
進むのが王なのか。
それとも。
民が望んでも。
止めるのが王なのか。
兄も。
弟も。
まだ。
答えを知らなかった。
王とは。
誰のために。
王であるべきなのか。




