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王の愚者  作者: クロワ
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46話「増えた友人」

それから。


 王国軍は。


 勝ち続けた。


『王国軍――敵軍を撃破』


『敵要塞陥落』


『敵主力部隊――撤退』


『王国軍――さらに進軍』


 昨日も。


 今日も。


 届く知らせは。


 勝利ばかりだった。


 そして。


 勝利の知らせが届くたび。


 王国の空気も。


 変わっていった。


「また勝ったぞ!」


「やっぱり」


「俺たちの国は強いんだ!」


 酒場では。


 新聞を囲んで。


 男たちが酒を掲げる。


「このまま」


「敵の王都まで行っちまえ!」


「徹底的に叩けばいい!」


 店先には。


 王国旗が並び。


 子供たちは。


 木の枝を剣にして。


 王国軍の真似をしていた。


 戦場にいない者たちまで。


 勝つたびに。


 勇ましくなっていった。


 ◇


 王都。


 ダイヤの机には。


 戦況報告とは別に。


 各国からの親書が積まれていた。


「不可侵条約」


「交易条件の見直し」


「こちらは」


「同盟の打診です」


「…………」


 王弟が。


 親書を見る。


「ようやく」


「伝わったようだな」


「何がです?」


「この国が」


「弱くないということが」


「ええ」


 ダイヤが。


 一枚の親書を手に取る。


「交易条件も」


「以前より」


「こちらに有利です」


「…………」


「国益だけで判断するなら」


「現状は」


「成功と言っていいでしょう」


 王弟が。


 僅かに笑う。


「十分だ」


「国益では」


「そうなのでしょう」


 ハートが。


 静かに口を開いた。


「だが?」


「利益になった戦争と」


「正しい戦争は」


「同じなのでしょうか」


「…………」


「正しいかどうかで」


「国境は守れない」


「ですが」


「勝ち続ければ」


「人は」


「自分たちは何をしても正しいと」


「思い始めます」


「…………」


 王弟は。


 何も答えなかった。


 ◇


 北部。


「また勝った!」


「王国万歳!」


「もっとやれ!」


「敵の王都まで攻めろ!」


 王たちが立ち寄った町でも。


 人々は。


 戦争の記事に沸いていた。


「随分と」


「勇ましくなりましたね」


 ジョーカーが言う。


「勝っているからな」


「なるほど」


「…………」


「戦場から離れるほど」


「勇気というものは」


「よく育つようですね」


「皮肉か?」


「まさか」


 ジョーカーが。


 笑う。


「皆さん」


「一度も剣を握らずに」


「これほど勇敢になられたのです」


「…………」


「実に」


「効率的ではありませんか」


 王は。


 新聞へ目を落とす。


『周辺諸国――王国との友好関係を希望』


「王弟の言った通りになった」


「ええ」


 ジョーカーが。


 新聞を覗き込む。


「随分と」


「友人が増えましたね」


「良いことだろう」


「もちろんです」


「ただ」


「昨日まで」


「我々の土地を欲しがっていた方々が」


「今日は」


「我々との友情を欲しがっている」


「…………」


「人というものは」


「随分と」


「強い友人がお好きなのですね」


「それでも」


「戦争を仕掛けられなくなるなら」


「王弟の目的は」


「達成されている」


「ええ」


「見事なものです」


 ジョーカーは。


 新聞を折り畳む。


「剣を見せただけで」


「友人まで増えるとは」


「…………」


「外交官より」


「剣の方が」


「お話がお上手らしい」


 ◇


 その頃。


 遥か東の大国。


 一人の将軍が。


 王国の記事を読んでいた。


『王国軍――連戦連勝』


『周辺諸国、相次いで友好を表明』


「王国……か」


 将軍の指が。


 地図の王国へ触れる。


「弱い国は」


「気にする必要がない」


「…………」


「だが」


「強くなろうとする国は」


「話が違う」


 将軍は。


 王国を見つめた。


「覚えておけ」


「この国を」


 王国は。


 勝利によって。


 友人を増やした。


 そして。


 同じ勝利によって。


 今までこちらを見てもいなかった者の。


 視界にも。


 入り始めていた。


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