↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王の愚者  作者: クロワ
PR
39/102

39話「知らなかった国」

王たちは北へ向かっていた。


 百人の兵では目立つ。


 そのため。


 王。


 ジョーカー。


 スペード。


 数人の護衛だけで。


 近くの町へ入った。


「…………」


 市場には人が集まり。


 子供たちが走り回っている。


「思ったより平穏だな」


「ええ」


 ジョーカーが笑う。


「平和で何よりですね」


「その言い方は何だ」


「いえ、何も」


 しばらく歩き。


 王が気づく。


「若い男が少ないな」


「お気づきになりましたか」


「知っていたなら言え」


「陛下がご自身で見る旅でしょう?」


「…………」


「私が教えては意味がありません」


 ◇


 三人は。


 小さな食堂へ入った。


「旅人か?」


「ああ」


 王が店主に尋ねる。


「この町は」


「若い者が少ないな」


「ああ」


「殿下のところへ行ったからな」


 王の手が止まる。


「殿下?」


「王弟殿下だよ」


「連れていかれたのか?」


「まさか」


 店主が笑う。


「自分から行ったんだ」


「…………」


「この辺りは昔から」


「盗賊が多くてな」


「王都に何度頼んでも」


「どうにもならなかった」


 店主が続ける。


「そんな時」


「王弟殿下が来た」


「盗賊を討って」


「若い連中に剣まで教えてくれた」


「…………」


「それで皆」


「殿下についていったんだ」


 王が尋ねる。


「王が嫌いだったのか?」


「いや?」


 店主は首を傾げる。


「別に嫌いじゃない」


「ただ」


「…………」


「王様は」


「俺たちのことなんて知らないだろ?」


 王は。


 何も答えなかった。


「王弟殿下は」


「ここまで来てくれたからな」


 ◇


 店を出る。


 三人は。


 黙って歩いていた。


「ジョーカー」


「はい」


「何か言いたそうだな」


「まさか」


「言え」


「では」


 ジョーカーが笑う。


「陛下は」


「随分と民に愛されておりますね」


「…………」


「嫌われるほど」


「知られてすらいなかったようです」


「ジョーカー」


 スペードが睨む。


「いい」


 王が止める。


「事実だ」


 ジョーカーが。


 僅かに目を見開く。


「怒られないのですね」


「事実に怒ってどうする」


 王は。


 町を見る。


「余が知らなかった」


「それだけだ」


 ◇


 町を出る。


 王が振り返る。


「あいつは」


「余が見ていなかったものを」


「見ていたんだな」


「そうですね」


 ジョーカーが答える。


「盗賊を討ち」


「若者を守った」


「立派ですね」


「皮肉か?」


「いいえ」


 ジョーカーが笑う。


「今回は本当に」


「だから困るのです」


「…………」


 王弟が。


 全て間違っているのなら。


 倒せばいい。


 だが。


 王弟に救われた者がいる。


 自ら。


 ついていった者がいる。


「まず一つ目だ」


 王が呟く。


「何がでしょう」


「王弟が正しかったことだ」


「…………」


「あいつは」


「余より先に」


「この土地を見ていた」


「認めるのですか?」


「そのために来た」


 王が。


 北を見る。


「あいつを否定するためではない」


「余の答えを見つけるためだ」


「…………」


「行くぞ」


「どちらへ?」


「北だ」


 ジョーカーが。


 僅かに笑う。


「危険ですよ」


「ああ」


 王は歩き出す。


「だから見に行く」


 王弟が見た国を。


 今度は。


 王自身の目で見るために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。