26話「襲撃」
「門を閉めろ!」
「弓兵! 上へ!」
「近衛は陛下の周囲を固めろ!」
クラブの声が砦に響く。
「来るぞ!」
梯子が壁へ掛かる。
武装兵が登ってくる。
「落とせ!」
近衛兵が梯子を押す。
だが。
別の場所から次々と侵入してくる。
「団長!」
「慌てんな!」
クラブが侵入してきた男の剣を弾く。
そのまま柄で顔面を殴る。
「ぐっ!」
男が倒れる。
次。
横から来た敵の腹へ蹴り。
「陛下!」
「なんだ!」
「少し後ろへ!」
「余も剣くらい――」
「知ってます!」
クラブが敵の剣を受け止める。
「ですが、近衛騎士団長ってのはですね!」
敵を弾き飛ばす。
「こういう時くらい格好つけないと!」
別の敵を斬り伏せる。
「普段遊んでるだけだと思われるんですよ!」
「実際よく遊んでいるだろ!」
「今言います!?」
クラブが振り返る。
「そういうところ、昔から変わってませんね!」
「お前に言われたくない!」
「その調子なら大丈夫そうですね!」
クラブが笑う。
そして。
敵を見る。
笑顔が消えた。
「近衛!」
「はっ!」
「陛下には一本たりとも剣を届かせるな!」
「はっ!!」
◇
「兄上!」
王弟が王へ駆け寄る。
「ここも危険です!」
「クラブたちが持ちこたえている」
「いつまで持つか分かりません!」
再び砦が揺れる。
「陛下!」
隣国の将軍も剣を抜く。
「一度ここを離れろ!」
「貴殿はどうする」
「我が兵をまとめる!」
「分かった」
「死ぬなよ」
「お互いな」
数刻前まで。
互いを戦争相手として睨んでいた二人だった。
「兄上、こちらへ!」
王弟が王の腕を引く。
「裏門があります!」
「裏門?」
「正門は敵に囲まれています。東側の通路から回れば外へ出られる!」
「待ってください!」
クラブが振り返る。
「東側は敵が集中してる!」
「だからこそです!」
王弟が叫ぶ。
「敵は砦内部へ入ろうとしている! その間に外へ抜ける!」
「…………」
クラブが一瞬迷う。
その間にも。
「団長!」
「新手です!」
敵兵が押し寄せる。
「くそっ!」
クラブが剣を構えた。
「陛下!」
「なんだ!」
「すぐ追いつくので絶対死なないでくださいよ!」
「誰に言っている」
「昔から無茶するガキだったでしょうが!」
「誰がガキだ!」
「そういうところです!」
クラブが敵へ向かう。
「行ってください!」
王は一瞬だけクラブを見る。
「……死ぬなよ」
「そっくりそのまま返します!」
「行きましょう、兄上!」
王弟に促され。
王は東側の通路へ走った。
◇
その頃。
砦から少し離れた森。
「……くそ」
スペードが木に手をついた。
「スペード様」
「止まるな」
「止まったのはスペード様ですが」
「分かっている!」
「でしたら怒らないでください」
ジョーカーがスペードの腕を取る。
「離せ」
「嫌です」
「走れる」
「先ほどから三度ほど転びかけていますよ」
「二度だ」
「そこを訂正する元気はあるのですね」
遠くから。
爆発音。
木々の向こう。
煙が上がっている。
「……砦」
スペードの顔色が変わる。
「始まったか」
ジョーカーの笑みが消えた。
「急ぐぞ!」
二人が走り出す。
◇
王と王弟は。
東側の通路を走っていた。
「もう少しです!」
階段を下りる。
下。
その先。
裏門。
「ここを出れば森へ抜けられます!」
王弟が扉へ手を掛けた。
開く。
外の光が差し込む。
王が外へ出る。
「…………」
足が止まった。
静かだった。
不自然なほどに。
王は前を見る。
森の中。
一人の男が立っている。
黒い鎧。
左頬の傷。
そして。
肩に担いだ――巨大な剣。
「…………」
男が笑った。
「ようやく来たか」
王が剣へ手を伸ばす。
「お前がガレスか」
「ああ」
大剣を肩から下ろす。
「そして――」
ガレスは王を見る。
「お前を殺して大将軍になる男だ」
王は黙って剣を抜いた。
その背後で。
王弟もまた――
静かに剣へ手を掛けた。




