106話「順番」
南部国境。
会議室。
ダイヤが。
三通の書状を並べる。
「近隣諸国からの」
「返答です」
王。
「聞こう」
「西の国からは」
「食料と医薬品」
「すでに一部が」
「こちらへ向かっています」
ハート。
「ありがたいですね」
「ただし」
「難民の受け入れは」
「行わないと」
王。
「ああ」
「それでも助かる」
ダイヤ。
「北西の国は」
「五百人まで」
「受け入れるとのことです」
「そして」
「南西の国は」
「一切の協力を」
「行わないと」
王。
「…………」
ジョーカー。
「三カ国とも」
「大変」
「個性豊かですね」
王。
「北西の国へ」
「行きたい者を」
「確認しよう」
ハート。
「行きたくない者は?」
王。
「送らん」
「人を」
「荷物のように」
「振り分けるつもりはない」
◇
一時保護区域。
役人が。
人々へ説明している。
「北西の国が」
「五百人まで」
「受け入れます」
ざわめきが広がる。
「希望する方は」
「こちらへ」
一人の女性が。
手を上げる。
「私は行きます」
「子供と」
「一緒なら」
役人。
「もちろんです」
別の男。
「俺も」
「あの国には」
「昔」
「仕事で行ったことがある」
一方。
首を横に振る者もいる。
「私は」
「王国に残りたい」
「なぜです?」
「姉が」
「王国にいる」
別の男。
「俺も王国だ」
「仕事が」
「多いと聞いた」
老人。
「私は」
「どこでもいい」
「もう」
「逃げなくていいなら」
数日かけて。
希望が確認された。
北西の国へ向かう者。
五百人。
受入枠と。
希望者が一致した。
馬車が。
国境を離れていく。
王。
「五百人か」
ダイヤ。
「はい」
「ですが」
「まだ」
「多くが残っています」
「その中でも」
「王国への移住希望者が」
「最も多い」
王。
「何人だ?」
「三千を」
「超えています」
王。
「受け入れられるのは?」
「各地からの回答を」
「合わせても」
「二千人ほどです」
王。
「…………」
「なら」
「千人以上は」
「入れない」
「はい」
王は。
門の外を見る。
「決めるしか」
「ないか」
◇
会議室。
ダイヤ。
「まず」
「すぐに働くことができ」
「働く意思のある者」
「その家族を」
「優先します」
ハート。
「なぜです?」
「受け入れた後」
「自分たちで」
「生活を築ける可能性が」
「高いからです」
ダイヤが。
王国各地から届いた。
求人の一覧を置く。
農業。
建設。
運送。
鉱山。
職人。
様々な仕事。
「王国にも」
「人手を必要としている場所が」
「あります」
王。
「本人だけでは」
「駄目なのか?」
ダイヤ。
「妻と子を」
「国境に置いていくのであれば」
「働きに行く者など」
「ほとんどいないでしょう」
王。
「ああ」
「家族は」
「一緒に受け入れよう」
ハート。
「次は?」
ダイヤ。
「親を失った」
「孤児です」
王。
「働ける者を」
「優先するのに?」
「働けないからこそです」
ダイヤ。
「親も」
「頼れる者もいない」
「その者たちは」
「国が保護します」
ハート。
「…………」
「そこは」
「私も賛成です」
ダイヤ。
「珍しいですね」
ハート。
「あなたが」
「言わないでください」
王。
「三つ目は?」
「王国内に」
「生活を支えてくれる」
「親族」
「あるいは友人が」
「いる者です」
「本当に」
「支えられるのか?」
「確認します」
「住む場所」
「当面の食事」
「生活の支援」
「引き受ける者がいるなら」
「国だけで」
「支える必要はありません」
王。
「それでも」
「受入枠を超えたら?」
ダイヤ。
「その他の者には」
「一時保護区域で」
「待っていただきます」
ハート。
「いつまで?」
「分かりません」
「王国内に」
「新たな受入余力ができるか」
「他国から」
「追加の協力が得られるまで」
王。
「…………」
ジョーカー。
「助ける場所は」
「作れましたが」
「住める場所までは」
「作れませんでしたね」
◇
翌日。
審査が始まる。
役人。
「仕事は?」
男。
「大工を」
「十年以上」
役人。
「王国でも」
「働く意思は?」
「ある」
「何でもやる」
「家族は?」
「妻と」
「息子が二人」
役人が。
名簿に印をつける。
次。
小さな少女。
一人。
ハートが。
しゃがむ。
「お父さんと」
「お母さんは?」
少女は。
首を横に振る。
「一緒に来た人は?」
また。
首を横に振る。
ハート。
「そうですか」
「では」
「私たちと」
「行きましょう」
次。
一人の女性。
「王国内に」
「親族か友人は?」
「友人がいます」
「どこに?」
「南部の町です」
「一緒に」
「働いていました」
役人。
「確認します」
少しずつ。
門を越える者が。
決まっていく。
その様子を。
一人の老人が。
離れた場所から見ている。
王。
「どうした?」
老人。
「俺は」
「待つらしい」
王。
「…………」
「もう」
「七十を超えてる」
「働けないことはないが」
「若い奴みたいには」
「動けん」
「王国に」
「知り合いもいない」
老人は。
門を越えていく。
若い家族を見る。
「若ければ」
「俺も」
「あっちだったのか?」
王。
「…………」
老人。
「別に」
「怒ってるわけじゃない」
「飯ももらってる」
「寝る場所もある」
「殺される心配もない」
「それだけでも」
「ありがたい」
少し黙る。
「でも」
「いつまで」
「待てばいい?」
王。
「…………」
「分からん」
老人。
「そうか」
老人は。
天幕へ戻っていく。
ダイヤ。
「陛下」
王。
「分かっている」
「この順番が」
「全員にとって」
「公平だとは」
「思っておらん」
ダイヤ。
「はい」
王。
「働ける者が」
「偉いわけでもない」
「若い者の命が」
「重いわけでもない」
「ただ」
「余の国には」
「全員を」
「受け入れる力がない」
王は。
門を見る。
「なら」
「受け入れた後まで」
「守れる者から」
「受け入れる」
「そして」
「待たせる者も」
「守る」
ダイヤ。
「はい」
ジョーカー。
「正しい順番かは」
「分かりませんね」
王。
「ああ」
「だが」
「何も決めなければ」
「門の前に来た順になる」
ジョーカー。
「なるほど」
「考えないことも」
「立派な決め方ですね」
王。
「だから」
「考えた」
夕暮れ。
北西の国へ向かった者。
王国へ入る者。
そして。
一時保護区域に残る者。
同じ国から。
同じように逃げてきた人々が。
国境で。
別々の道へ。
分かれていく。
その中で。
老人は。
今日も。
門の外にいた。




