↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王の愚者  作者: クロワ
PR
105/109

105話「こちら側」

南部。


一時保護区域。


昨日まで何もなかった土地に。


いくつもの天幕が並んでいる。


水を運ぶ兵士。


鍋をかき混ぜる神官。


怪我人を診る医師。


王。


「随分と」


「形になったな」


ダイヤ。


「はい」


「食料も」


「当面は問題ありません」


王。


「当面?」


「三日です」


「…………」


ジョーカー。


「大変」


「長期的ですね」


ダイヤ。


「黙っていてください」


王。


「三日後は?」


「南部の町から」


「追加で買い集めれば」


「もう少し」


「ですが」


ダイヤが帳簿を閉じる。


「その南部から」


「陛下に」


「話があるそうです」


◇


南部の町。


広場には。


多くの住民が集まっていた。


王。


「遠慮はいらん」


「思っていることを」


「話してくれ」


最初に手を挙げたのは。


一人の女性。


「私は」


「あの人たちを」


「助けることには」


「賛成です」


「昨日も」


「毛布を持っていきました」


ハート。


「ありがとうございます」


「でも……」


女性。


「いつまで」


「いるんですか?」


王。


「…………」


「まだ」


「分からん」


女性。


「そうですか……」


次。


宿屋の主人。


「空いてる部屋なら」


「何部屋か」


「使ってもらってもいい」


「ただ」


「ずっと無料は」


「無理です」


王。


「ああ」


「当然だ」


農家の男。


「働くなら」


「うちでも」


「何人か雇えるぞ」


すると。


別の男が声を上げる。


「仕事まで」


「用意するのか?」


「俺の息子だって」


「仕事を探してるんだ」


農家。


「じゃあ」


「お前の息子」


「うち来るか?」


「農業は」


「嫌だって」


「言ってる」


「じゃあ知らねえよ」


「そういう話じゃない!」


王。


「…………」


ジョーカー。


「仕事がないことと」


「したい仕事がないことも」


「同じ言葉で」


「呼ばれるのですね」


王。


「ややこしくするな」


「私は」


「整理しております」


◇


学校。


教師。


「今でも」


「かなりの人数です」


「難民の子供たちまで」


「受け入れるとなると」


「教室も」


「教師も」


「足りません」


ハート。


「子供に」


「罪はありません」


教師。


「分かっています」


「だから」


「困っているんです」


ハート。


「…………」


診療所。


医師。


「十人なら」


「診られます」


王。


「二十人なら?」


「何人かを」


「廊下に寝かせます」


「五十人なら?」


医師。


「…………」


「診られません」


王。


「…………」


外へ出る。


ハートは。


少し黙っている。


王。


「どうした?」


ハート。


「助けたいと」


「思うだけでは」


「足りないのですね」


ダイヤ。


「はい」


「食料も」


「家も」


「医師も」


「教師も」


「突然」


「増えませんので」


ハート。


「あなたは」


「本当に」


「現実的ですね」


ダイヤ。


「褒め言葉として」


「受け取ります」


ジョーカー。


「恐らく」


「違うと思います」


その時。


一人の老人が。


王を呼び止める。


「陛下」


王。


「なんだ?」


老人。


「あの人たちを」


「助けるなとは」


「言いません」


「でも」


老人が。


国境の方を見る。


「昨日から」


「俺たちの町は」


「何もかも」


「変わってます」


「王都は?」


王。


「…………」


「北部は?」


「西部は?」


「東部は?」


老人。


「王国で」


「助けるんですよね?」


「だったら」


「なんで」


「南部だけで」


「助けてるんです?」


王。


「…………」


老人。


「国境が」


「ここにあるのは」


「俺たちが」


「決めたわけじゃない」


王は。


少し黙る。


「ああ」


「その通りだ」


◇


夜。


会議室。


机いっぱいに。


王国の地図が広げられている。


王。


「南部だけに」


「背負わせるのは」


「やめる」


ダイヤ。


「各地に」


「受け入れ可能な人数を」


「確認します」


王都。


北部。


西部。


東部。


ダイヤが。


地図を指していく。


「空いている住居」


「食料」


「仕事」


「医療」


「学校」


「それぞれを確認し」


「実際に」


「受け入れられる人数を」


「積み上げます」


ハート。


「救いたい人数ではなく?」


ダイヤ。


「救える人数です」


「受け入れた後に」


「食べさせられないのでは」


「意味がありません」


王。


「ああ」


「やろう」


数日後。


各地から。


回答が届く。


ダイヤ。


「王都」


「五百」


「東部」


「三百」


「西部」


「二百」


「北部」


「百五十」


「南部を含めても」


「二千人ほどが」


「現実的な限界かと」


王。


「国境は?」


ダイヤ。


「現在」


「五千を」


「超えております」


王。


「…………」


ハート。


「半分にも」


「届きませんね」


ダイヤ。


「はい」


ジョーカー。


「受け入れる場所を」


「探している間にも」


「受け入れてほしい人は」


「増えておりますので」


王は。


地図を見る。


しばらくして。


王国の外へ。


視線を移す。


王。


「ダイヤ」


「はい」


「近くの国は」


「何カ国ある?」


ダイヤ。


「…………」


「陛下?」


王。


「余たちは」


「王国の中だけで」


「何とかしようとしていた」


「だが」


「逃げてきた者を」


「王国だけで」


「抱えなければならない」


「理由もない」


ハート。


「近隣諸国にも」


「協力を?」


「ああ」


王が。


地図の周辺国を指す。


「食料」


「医薬品」


「金」


「受け入れられるなら」


「人も」


「それぞれ」


「できることで」


「協力してもらう」


ダイヤ。


「断る国も」


「あるでしょう」


王。


「だろうな」


「だが」


「聞かなければ」


「全ての国が」


「断ったのと」


「同じだ」


ダイヤ。


「…………」


「使者を」


「送りましょう」


王。


「ああ」


ハート。


「これなら」


「もう少し」


「多くの人を」


「救えるかもしれません」


王。


「そうだな」


ジョーカー。


「皆様」


「快く」


「引き受けてくださると」


「よいですね」


王。


「…………」


「その言い方」


「絶対に」


「うまくいかんだろ」


「私は」


「期待しているだけですが」


数日後。


返事が届いた。


ダイヤ。


「まず」


「西の隣国」


「食料と医薬品を」


「提供するとのことです」


ハート。


「受け入れは?」


「しません」


王。


「…………」


「次」


「北西の国」


「五百人まで」


「受け入れると」


王。


「おお」


「ただし」


「それ以上は」


「受け入れないと」


「十分だ」


「次」


ダイヤが。


最後の手紙を見る。


「南西の国」


「…………」


王。


「どうした?」


ダイヤ。


「一切」


「協力しないとのことです」


ハート。


「理由は?」


ダイヤが。


手紙を読む。


「我が国の」


「問題ではない」


「以上です」


王。


「…………」


ジョーカー。


「大変」


「分かりやすい」


「外交文書ですね」


王。


「だが」


「一つの国は」


「五百人を」


「受け入れてくれる」


「食料を出す国もある」


「昨日よりは」


「前に進んだ」


ダイヤ。


「はい」


「問題が」


「一つ減りました」


王。


「珍しいな」


「そして」


「新しい問題が」


「一つ増えました」


王。


「…………」


「なんだ?」


ダイヤ。


「五百人の」


「移住についてです」


王。


「受け入れてくれるのだろう?」


「はい」


「ですが」


ダイヤが。


国境から届いた報告書を。


王の前へ置く。


「難民側が」


「行きたくないと」


「言っております」


王。


「…………」


ハート。


「なぜ?」


「王国に」


「残りたいそうです」


王。


「…………」


ジョーカー。


「受け入れる側にも」


「都合があり」


「受け入れられる側にも」


「都合がある」


王。


「…………」


ジョーカー。


「なかなか」


「両想いには」


「なりませんね」


王は。


報告書を見る。


助ける場所を。


増やした。


それでも。


人は。


荷物ではない。


行き先まで。


勝手に決めることは。


できなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。