101話「退屈な一日」
王都。
久しぶりに。
王が。
城へ帰ってきた。
「陛下!」
兵士たちが。
頭を下げる。
王。
「ああ」
「留守の間」
「変わりは?」
「特に」
「ございません!」
王。
「…………」
「そうか」
少し歩く。
「本当に?」
兵士。
「はい?」
ジョーカー。
「陛下」
「平和なのですよ」
「分かっておる」
◇
執務室。
机の上には。
書類。
書類。
書類。
王が。
一枚取る。
読む。
署名。
次。
読む。
署名。
次。
読む。
署名。
王。
「…………」
窓を見る。
「今」
「何時だ?」
ジョーカー。
「まだ」
「朝です」
「…………」
◇
再び。
書類。
読む。
署名。
読む。
署名。
王。
「…………」
「今は?」
「まだ」
「朝です」
「…………」
ジョーカー。
「東部では」
「この辺りで」
「鉱山主が」
「怒鳴り込んできましたね」
王。
「ああ」
「その後」
「奴隷解放戦線から」
「報告が来た」
「昼には」
「物価が上がりました」
「夕方には」
「人手が足りなくなった」
二人。
「…………」
王。
「静かだな」
「平和ですので」
「…………」
「暇だ」
ダイヤ。
「暇?」
大量の書類を。
机へ。
ドサッ。
「こちら」
「まだ」
「終わっておりませんが」
王。
「そういう意味ではない」
「どういう意味です?」
「…………」
「分からん」
◇
昼。
食事。
王が。
パンを食べる。
「…………」
ジョーカー。
「どうされました?」
「誰も」
「来ないな」
「食事中ですので」
「東部では」
「食事中でも」
「来た」
◇
「陛下!」
◇
王が。
振り返る。
「なんだ!?」
兵士。
「…………」
「お食事が」
「終わりましたら」
「書類を」
「三枚ほど」
「確認いただきたいと」
「…………」
「分かった」
◇
兵士が去る。
◇
王。
「三枚か」
ジョーカー。
「残念でしたね」
「何がだ」
◇
午後。
◇
廊下。
◇
向こうから。
ハート。
「陛下」
「ハート」
「お帰りなさいませ」
「ああ」
「ただいま」
◇
「神殿は?」
「特に」
「大きな問題は」
「ありません」
「…………」
「そうか」
◇
王。
「本当に?」
ハート。
「はい?」
ジョーカー。
「陛下は現在」
「問題がないことに」
「慣れておりません」
◇
さらに。
スペード。
「陛下」
「ご無事のご帰還」
「何よりです」
「ああ」
「軍は?」
「平穏です」
「国境は?」
「異常ございません」
「兵は?」
「問題なく」
「訓練しております」
◇
王。
「…………」
スペード。
「何か?」
「いや」
◇
「平和だな」
「はい」
◇
王。
「…………」
「そうか」
◇
夕方。
◇
会議室。
◇
久しぶりに。
皆が揃う。
◇
王。
ジョーカー。
ハート。
ダイヤ。
スペード。
◇
一つだけ。
空いている席。
◇
王が。
一瞬。
そこを見る。
◇
そして。
席につく。
◇
スペード。
「軍からの報告は」
「以上です」
ハート。
「神殿からも」
「以上です」
ダイヤ。
「財政についても」
「緊急の案件は」
「ございません」
◇
王。
「…………」
「終わりか?」
「はい」
◇
王が。
窓を見る。
◇
まだ。
明るい。
◇
「…………」
「まだ」
「こんな時間か」
ジョーカー。
「一日が」
「長いですね」
◇
王。
「ああ」
◇
「東部では」
「一日が」
「足りなかった」
「こちらでは」
「余っている」
◇
ジョーカー。
「平和とは」
「随分と」
「退屈なものですね」
ハート。
「良いことでは」
「ありませんか」
ジョーカー。
「もちろん」
「私は」
「退屈が」
「大好きです」
◇
王。
「嘘をつけ」
◇
夜。
◇
久しぶりの。
自分の部屋。
◇
王が。
寝台に座る。
◇
「…………」
◇
まだ。
眠くない。
◇
扉の外。
ジョーカー。
「陛下」
「なんだ」
「何か」
「問題でも?」
◇
王。
「ない」
「それは」
「何よりです」
◇
少しして。
王。
「ニア」
「はい?」
「明日も」
「こんな感じか?」
◇
少し。
間があく。
◇
「平和であれば」
「恐らく」
◇
王。
「…………」
「そうか」
◇
ジョーカー。
「東部へ」
「戻ります?」
「嫌だ」
◇
「では」
「お休みなさいませ」
「ああ」
◇
「おやすみ」
◇
静かな。
王都の夜。
◇
誰も。
怒鳴り込んでこない。
◇
誰も。
反乱を起こさない。
◇
物価も。
今日だけは。
急に上がらない。
◇
王。
「…………」
◇
「長い一日だったな」
◇
東部では。
あれほど。
欲しかった。
何も起こらない一日。
◇
いざ。
手に入れてみると。
◇
随分と。
長かった。




