↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王の愚者  作者: クロワ
PR
100/110

100話「王様」

東部評議会。


長い机の上には。


何枚もの報告書。


◇


鉱山。


農地。


物価。


仕事。


学校。


処理場。


自保。


◇


王が。


最後の一枚を置く。


「…………」


「これで」


「ひとまず」


「終わりか」


ダイヤ。


「終わり?」


王。


「違うのか?」


「明日の分なら」


「すでにあります」


「…………」


ジョーカー。


「国というものは」


「終わらないように」


「できているようですね」


◇


評議員が。


王の前に立つ。


「陛下」


「我々からも」


「お話があります」


王。


「なんだ?」


◇


「東部は」


「これからも」


「自分たちで」


「決めていきたいと」


「思っています」


◇


王。


「ああ」


「そうしろ」


「…………」


評議員が。


少し戸惑う。


「よろしいのですか?」


「何がだ?」


「我々は」


「王都の判断ではなく」


「自分たちで」


「決めたいと」


「言っているのですが」


王。


「だから」


「そうしろと」


「言っている」


◇


ジョーカー。


「随分と」


「聞き分けのよい」


「王様ですね」


「不満か?」


「仕事が減るのであれば」


「大歓迎です」


ダイヤ。


「減りませんよ」


「…………」


◇


王が。


評議員たちを見る。


「ただし」


「一つだけ」


「忘れるな」


◇


「東部とは」


「お前たち」


「評議会のことではない」


◇


静かになる。


◇


「町に住む者」


「村に住む者」


「商人」


「農民」


「鉱山で働く者」


「元奴隷」


「外から来た者」


◇


「皆」


「ここで」


「生きている」


◇


「自分たちで」


「決めるというなら」


「その」


「自分たちから」


「誰かを」


「勝手に外すな」


◇


評議員。


「…………」


「難しいですね」


王。


「ああ」


「余も」


「未だに」


「分からんことばかりだ」


ジョーカー。


「ご安心ください」


「陛下は」


「分からないことだけは」


「随分と」


「増えましたので」


王。


「成長しているのか?」


「知識不足が」


「明らかになっているだけかと」


「…………」


◇


翌朝。


王たちは。


東部を発つ。


◇


町を歩く。


◇


鉱山の前。


男が。


給金を受け取る。


「ほら」


「今週の分だ」


男が。


硬貨を数える。


「ちゃんと」


「俺の金だよな?」


「当たり前だろ」


男が。


笑う。


◇


少し先。


酒場の前。


「今日も」


「収穫の仕事」


「あるんだろ?」


「あるぞ」


「終わったら」


「ここな」


「お前」


「酒のために」


「働いてんのか?」


「悪いか!」


◇


ジョーカー。


「大変」


「立派な労働意欲ですね」


王。


「理由は」


「本人の自由だ」


◇


道の向こう。


自保の腕章をつけた男たち。


揉めている二人の間に。


入っている。


◇


「殴るな!」


「先にこいつが!」


「どっちが先でも」


「殴るな!」


◇


王。


「ノアは?」


「別の村!」


「人さらいが」


「出たって!」


「そうか」


◇


さらに歩く。


◇


鉱山へ向かう。


二人の男。


一人は東部の者。


もう一人は。


遠い国から来た者。


◇


「今日」


「休みたい」


「俺も」


「でも」


「金」


「欲しい」


「俺も」


◇


二人で。


笑う。


◇


学校の前。


子供たち。


その隣では。


大人たちも。


文字を習っている。


◇


「これ」


「なんて読む?」


「給料」


「おお」


「大事な字だな」


◇


その向こう。


鍛冶屋。


若者が。


職業体験をしている。


◇


「熱っ!!」


「無理!!」


「俺これ」


「向いてない!!」


親方。


「まだ半日だぞ!」


「半日で」


「十分分かった!!」


◇


王。


「…………」


ジョーカー。


「一つ」


「賢くなりましたね」


◇


町を抜ける。


◇


処理場の予定地。


今も。


看板が立っている。


――建設反対。


◇


王が。


少し見る。


男が。


王に気づく。


「陛下!」


「俺は!」


「まだ反対だからな!」


王。


「ああ」


「知っている」


「臭かったら!」


「すぐ文句言いに行くからな!」


「来い」


「毎日でも!」


「それは」


「少し困る」


◇


男が。


笑う。


◇


ジョーカー。


「随分と」


「平和な反逆者ですね」


王。


「反対するだけで」


「反逆者にするな」


◇


町の外。


馬車が。


待っている。


◇


評議員たちが。


見送りに来ていた。


「陛下」


王が。


振り返る。


「ありがとうございました」


◇


王。


「礼を言うには」


「まだ早い」


「…………?」


「これからは」


「お前たちが」


「やるのであろう?」


◇


評議員。


「…………」


「はい」


◇


王が。


馬車へ乗る。


ジョーカーも。


続く。


ダイヤが。


大量の書類を抱えて。


乗り込む。


王。


「それも」


「持って帰るのか?」


「当然です」


「東部で使った」


「お金の報告です」


「置いていけ」


「王都で」


「続きをしましょう」


ジョーカー。


「陛下」


「馬車から」


「降りますか?」


「余を」


「東部に捨てるな」


◇


馬車が。


走り出す。


◇


少しずつ。


東部の町が。


遠ざかっていく。


◇


ジョーカー。


「結局」


「東部に」


「王は」


「必要だったのでしょうか?」


王。


「さあな」


「おや」


「随分と」


「働いたというのに」


「必要なかったのなら」


「悲しくありませんか?」


◇


王が。


窓の外を見る。


◇


「それでいい」


「…………」


◇


「王が」


「いなくとも」


「民が」


「自分たちで考え」


「自分たちで選び」


「間違えれば」


「自分たちで直す」


◇


「そんな国なら」


「王など」


「いらんだろう」


◇


ジョーカー。


「…………」


「王様が」


「それを」


「言いますか」


王。


「ああ」


◇


「余が」


「王だからな」


◇


ジョーカーが。


少し笑う。


「では」


「陛下が」


「いらなくなる日まで」


「もう少し」


「働いていただきましょう」


王。


「もう少しか?」


「かなり」


「先かもしれません」


「…………」


◇


馬車は。


東部を離れていく。


◇


かつて。


王はいらないと。


言った土地。


◇


そこでは今。


誰かに。


決めてもらうのではなく。


◇


自分たちで。


迷い。


選び。


間違え。


また。


考え始めていた。


◇


王は。


その土地を。


振り返らなかった。


◇


王都へ。


帰るために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。