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無盃の将  作者: G
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着々と進む準備

 第六十九話


 鳴神所、本部。


 増井は所長室の扉を開けた。


「失礼します」


 室内では、山道武則が机に向かっていた。


「例の巻物は?」


「こちらに」


 増井は布に包まれた巻物を机に置いた。


 山道は布を解き、巻物を手に取った。


「……龍禍録か」


「千堂祀が所持していたものです。間違いありません」


 山道は巻物を広げ、しばらく中身を確かめた。


「ようやく手に入ったな」


「はい」


「千堂は?」


「始末しました」


「始末したのか。この俺が直々に殺してやりたかったが、まぁいい。次の作戦に取り掛かるか」


 山道は巻物を閉じた。


「荒木孝太郎はどうしている?」


「いちよう動向を追ってます」


「監視は?」


「続けています」


 山道は椅子の背にもたれた。


「千堂が死んだと知れば、うちに寝返るかもな」


「こちらにつくんですか?」


「その可能性はある」


「ならば、怪しいので殺した方がいいんじゃないでしょうか?」


「焦るな。仲間になるように誘導したのは俺だ。ただあの時は龍禍録を手に入れるためだったんだがまぁいい」


 山道は即答した。


「……」


「育ての親が自分の両親を殺したと知って、今までどおり龍牙連合に忠誠を誓えると思うか?」


「しかし、復讐に来る可能性もありますよ。」


「当然だ。裏切ればすぐに殺すだけだ」


 山道は机の上の龍禍録に目を落とした。


「連合を疑い始めれば、それで十分だ」


 増井は頷いた。


「龍禍録の解析は、いつから始めますか?」


「すぐに取りかかれ」


「承知しました」


「ただし、まだ動くな。準備が整うまでは龍牙連合に気づかれるなよ」


「はい」


 増井が退出しようとしたとき、山道が呼び止めた。


「増井」


「何でしょう」


「荒木孝太郎に動きがあれば報告しろ」


「使えるなら、使えばいい」


 増井は一礼し、部屋を出た。


 山道は再び龍禍録を手に取った。


 その表情から笑みが消える。


「……ようやくだ」


 机の上には、一枚の古い写真が置かれていた。


 そこには若き日の千堂祀と、山道の父親が写っていた。


 山道は写真を裏返した。


「次は龍牙連合だ」

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