失踪 続き
会場内と周辺の捜索が始まってから、しばらくが経った。
しかし、孝太郎の行方は分からないままだった。
「医務室に運ばれたところまでは、間違いないんですよね?」
神崎が積田に尋ねる。
「ああ。試合後、医務室へ運ばれたと聞いている」
「だったら、そこにいた人間に聞けば何か分かるんじゃないんですか?」
その言葉に、蓮が顔を上げた。
「そうだ。並木さんなら、孝太郎の容態を知ってるはずだ」
蓮はすぐに医務室へ向かった。
並木は、蓮が御影との試合で負傷した際にも手当てをしてくれた人物だ。孝太郎も世話になっていたし、少なくとも彼なら何か知っているだろう。
そう考えていた。
しかし――。
「……あれ?」
医務室に入った蓮は、足を止めた。
やはり誰もいない。
蓮は廊下に出て、近くを通りかかった大会関係者を呼び止めた。
「すみません。並木健介さんって、今どこにいますか?」
「並木さん? さあ……。さっきから見ていないけど」
「えっ、さっきまで医務室にいたんじゃないんですか?」
「いや、俺は知らないな。担当が交代したのかもしれない」
それだけ言うと、関係者は足早に去っていった。
蓮はもう一度、医務室の中を見渡した。
孝太郎もいない。
そして、並木もいない。
「……どういう事だ」
蓮の胸に、嫌な予感が広がっていく。
孝太郎が姿を消したことと、並木がいなくなったこと。
偶然だと考えるには、どうにも引っかかる。
蓮はすぐに積田のもとへ戻った。
「積田さん。並木さんもいません」
「並木?」
「孝太郎を診ていた人です。さっき確認しに行ったんですけど、医務室にもいないし、周りの人も居場所を知らないって」
積田は黙り込んだ。
「……その並木という人間、最後に孝太郎を診ていたんだな?」
「はい。少なくとも、俺が知っている限りでは」
積田は腕を組み、しばらく考え込んだ。
「分かった。その並木って人も探そう。もしかしたら、二人とも事件に巻き込まれたかもしれない」
「はい!」
蓮は拳を握った。
「孝太郎何も言わずにいなくなるとは、」
積田は蓮の顔を見つめたあと、小さく頷いた。
「俺もそう思う。捜索範囲を広げるぞ。会場の出入り口も確認してくれ」
神崎たちにも新たな指示が伝えられ、捜索は続けられた。
だが、孝太郎の姿も、並木の姿も見つからなかった。
その頃、会場から離れた古いビルの一室では――。
「……ん」
荒木孝太郎が、ゆっくりと目を開けた。




