決意
第五十五話
「神代蓮に代わって、俺が出る」
孝太郎の言葉に、積田が目を向けた。
その直後だった。
「待て、孝太郎!」
神崎が声を上げ、孝太郎の前に立ちはだかった。
「お前、本気で言ってるのか?」
「当たり前だ」
「相手を見ただろ。あの鎖、普通の攻撃じゃない。蓮でさえ対応できなかったんだぞ」
「わかってる。蓮がやられてるのに見てるだけなんて出来ねぇ」
孝太郎は神崎の横を通ろうとした。
しかし、今度は堂本が腕を伸ばして行く手を塞いだ。
「それにお前が出なくても次、神崎が御影と対決して、その後にお前が出ればいいじゃねぇか」
「そういう訳にはいかねぇんだよ。」
「本来なら俺や蓮はこの大会に出ることすらなかったんだ。そして、俺は前回の任務で失敗をし、蓮や丸野さんに助けて貰った。そして、この大会は会長が俺にくれた最後のチャンスなんだ。なのに俺は何も出来ずただ試合を見てるだけなんだ」
「何を急に……」
「蓮はここまで俺のためにずっと戦ってくれた。そのあいつが試合とはいえ、ボロクソにやられたこの状況で黙ってられるほど人間出来てねぇんだよ!」
孝太郎が思わず声を荒らげた。
東も心配そうに孝太郎を見つめる。
「孝太郎、蓮は負けたけど、だからって焦って出る必要はないよ。御影の能力をもう少し見てからでも……」
「わかってる。でも交代はここでしたい」
孝太郎は静かに答えた。
東は言葉を止めた。
孝太郎の表情に、迷いはなかった。
「この試合何がなんでも勝ってみせる」
「お前な……」
神崎が眉を寄せる。
「俺たちが止めてる理由、分かってるか?」
「ああ。我儘なのはわかってる」
「わかってないじゃん。次の試合で俺があいつに負けてからの方が試合に勝てるかもしれないだろ」
「後、お前らのことは嫌いじゃないが、俺は蓮からバトンを受け取りたい」
孝太郎は三人を見回した。
「我儘なのはわかってる。頼む」
孝太郎は試合場へ視線を向けた。
倒れた蓮は、係員の手を借りながら医務室へ運ばれていくところだった。
「ここで俺が出なかったら、俺はあいつのダチは愚か男ですらねぇ」
三人はすぐには答えられなかった。
孝太郎はもう一度、積田へ向き直る。
「交代を認めてくれ」
神崎は唇を結び、堂本は悔しそうに頭をかいた。
東も、これ以上は止められないと悟ったように一歩下がった。
それでも神崎だけは、最後に孝太郎の肩をつかんだ。
「……そこまで言うならお前があいつに勝ってこい」
「ありがとう」
孝太郎は小さく笑った。
「ふん」
神崎はしばらく孝太郎を見つめていたが、やがて肩から手を離した。
孝太郎は積田の前へ進み出る。
仲間たちの視線を背に受けながら、交代の手続きを申し出た。




