準決勝 第二試合 続き
御影透が試合場に立つ。
蓮は構えを崩さず、相手の動きを見ていた。
御影は無理に踏み込んでこない。ただ、静かに蓮を見据えている。
「来ないのか?」
蓮が問いかける。
「まぁ、慌てるな」
御影はそう答えた。
蓮は一気に距離を詰める。
拳を放つ直前、身体がわずかに引かれた。
「……っ?」
踏み込んだはずの足が、思うように前へ出ない。
蓮はすぐに体勢を立て直し、距離を取った。
何かに引っ張られた。
だが、足元にも身体にも、それらしいものは見当たらない。
「どうした?」
御影が首を傾げる。
蓮は答えず、再び踏み込んだ。
今度は拳を振るう直前、腕が横へ引かれた。
狙いが逸れる。
その隙を突き、御影の蹴りが蓮の脇腹に入った。
「ぐっ……!」
蓮は数歩後退した。
観客席がざわめく。
御影はほとんど動いていない。それなのに、蓮の攻撃は届かず、反対に攻撃を受けている。
蓮は呼吸を整え、龍包囲を展開した。
身体の周囲に魄が巡る。
次の瞬間、御影が踏み込んだ。
蓮は腕を上げる。
しかし、衝撃は正面からではなかった。
身体が横へ引かれ、バランスを崩す。
続けて、背後から何かに引っ張られた。
「なに……?」
蓮が踏ん張った瞬間、今度は足首が強く引かれた。
身体が傾く。
御影の拳が迫った。
蓮はかろうじて腕で受けたものの、衝撃を逃がしきれず、試合場を滑るように後退した。
龍包囲・守を使っても、防ぎきれない。
攻撃が見えていない。
そもそも、どこから何が来るのか分からないのだ。
蓮は御影を見据えた。
御影の手元に、鎖らしきものはない。
それでも、確かに身体を拘束されている。
「……なるほどな」
蓮が小さく呟いた。
御影は答えない。
蓮は攻め込むタイミングを探るが、動こうとするたびに身体のどこかが引かれる。攻撃を避けようとしても、足を取られ、体勢を崩される。
このままでは勝てない。
蓮の頭に、ひとつの手段が浮かんだ。
龍演舞。
問題は、龍陣を描き切るまでの時間だった。
蓮は一度、深く息を吸った。
やるしかない。
足を動かし、龍陣を描き始める。
だが、その動きを御影は見逃さなかった。
「やっぱり、そうきたか」
御影が一気に踏み込んだ。
前の試合で蓮が龍演舞を使うところを見ていた。発動までに必要な動きも、危険性も分かっている。
完成させるわけにはいかない。
御影の腕が動く。
蓮の足が引かれ、描きかけた龍陣が乱れた。
「くそっ……!」
蓮は体勢を立て直そうとする。
しかし、今度は腕を引かれた。
さらに足元を取られ、身体が大きく傾く。
御影はその隙を逃さなかった。
踏み込んだ拳が、蓮の腹部を捉える。
「ぐっ……!」
蓮の身体が折れた。
続けて御影が足を払う。
蓮は受け身を取ろうとしたが、身体を引かれ、うまく動けない。
最後は龍包囲で身体能力を上げ蓮をサンドバッグのように殴る。
そのまま試合場に倒れ込んだ。
「そこまで!」
積田の声が響いた。
蓮は起き上がろうとした。
だが、身体に力が入らない。前の試合で負った傷に加え、御影の攻撃を受け続けたことで、限界が近づいていた。
積田が蓮の様子を確認する。
「神代蓮、戦闘続行不能と判断する。不動会、御影透の勝利!」
観客席から歓声が上がった。
御影は一度だけ蓮を見下ろし、それから静かに試合場を離れようとした。
龍牙連合の控え場所では、孝太郎が立ち上がっていた。
蓮が敗れた。
その事実を受け止めながら、孝太郎は積田のもとへ歩き出す。
「積田さん」
積田が振り返った。
「交代を申し出る」
孝太郎は、まっすぐに試合場を見据えた。
「神代蓮に代わって、俺が出る」




