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無盃の将  作者: G
1

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第四試合 続き


「……何だ?」


黒田の動きが止まる。


蓮は答えない。


龍陣を踏みながら、ゆっくりと身体を動かし始める。


一歩。


二歩。


身体を回転させる。


足が地面をなぞり、龍陣の線が少しずつ伸びていく。


「何をしてる……?」


黒田には分からない。


蓮は舞っている。


戦いの最中だというのに、まるで別の場所にいるかのように。


その光景に、観客がざわめき始めた。


「なんだ、あれ……」


「龍術なのか?」


神崎、堂本、東も試合場を見つめる。


誰も、この技を知らない。


ただ一人を除いて。


「……蓮」


孝太郎だけが呟いた。


その表情が変わる。


「あれは……龍演舞だ」


黒田が一歩下がる。


正体は分からない。


だが、危険なものだということだけは分かる。


「……何か仕掛けてるな」


黒田は距離を取った。


そして手のひらを蓮へ向ける。


(なら、近づかないで様子をみよう)


硬圧。


ドンッ!


蓮は舞いながら身体を捻る。


圧力弾が肩を掠めた。


それでも止まらない。


「硬圧!」


二発。


蓮は龍陣を描きながら避ける。


三発。


四発。


黒田は距離を詰めず、硬圧を撃ち続ける。


それでも、舞は止まらない。


少しずつ。


周囲にいる人間から魄が蓮へ集まっていく。


ただ、龍陣がその魄を少しずつ蓄えていく。


「……何なんだよ、あれ!」


黒田の焦りが増していく。


硬圧がさらに速くなる。


蓮の腕を掠める。


血が流れる。


それでも蓮は舞う。


龍陣の線が、繋がっていく。


その様子を見ていた孝太郎の顔が険しくなった。


「……まずいなぁ、あいつ手から魄を吸収してるって聞いたけど硬圧は吸収出来ねぇのかよ」


積田の目が見開かれた。


「……全員、聞け!」


積田が他の審判へ声を飛ばす。


「防壁の準備だ!」


四人の審判が同時に動いた。


黒田はまだ知らない。


蓮が何をしようとしているのか。


ただ、完成させてはいけない。


それだけを感じていた。


「硬圧!!」


最大まで圧縮した魄を放つ。


ドンッ!!


蓮の身体が揺れる。


それでも――


止まらない。


最後の一歩。


最後の線。


龍陣が繋がった。


瞬間。


試合場に集まっていた魄が、一気に蓮へ集束する。


空気が震えた。


蓮の身体から、凄まじい魄が溢れ出す。


「……完成した」


孝太郎が呟く。


積田が叫ぶ。


「全員、下がれ!!」


試合場の周囲に、巨大な魄の壁が立ち上がった。


黒田もようやく理解する。


「まさか……!」


蓮は龍陣の中心で、ゆっくりと構えた。


「――龍演舞」


次の瞬間。


ドンッッッ!!


凄まじい衝撃が試合場を覆った。


蓮を中心に、蓄積された魄が一気に放たれる。


爆風が試合場を駆け抜ける。


審判たちの防壁が激しく揺れた。


「ぐっ……!」


「耐えろ!」


四人が必死に魄を送り込む。


防壁に亀裂が走る。


観客席まで衝撃が届く。


そして――


数秒後。


ようやく爆風が収まった。


試合場には、濃い煙が立ち込めている。


静まり返る会場。


やがて煙の向こうから、人影が現れた。


蓮だった。


身体は傷だらけ。


呼吸も荒い。


「はぁ、勝ったぜ……」


そして――


少し離れた場所。


黒田が倒れていた。


積田が確認する。


「……黒田、戦闘続行不能」


積田は立ち上がった。


「そこまで!」


会場に声が響く。


「勝者――龍牙連合所属、神代蓮!」


一瞬の静寂。


その後、会場から大きな歓声が巻き起こった。

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