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無盃の将  作者: G
1

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第四試合

 第四十九話


「第四試合、選手入場!」


会場に響いた声とともに、二人の選手が場内へ入る。


「龍牙連合所属――神代蓮!」


歓声が上がる。


蓮は軽く手を上げ、そのまま試合場の中央へ歩いていく。


「対するは、不動会所属――黒田!」


黒田もゆっくりと歩を進め、蓮の前で止まった。


互いに向かい合う。


「両者、構え」


積田の声に、二人が腰を落とす。


蓮は拳を握った。


まだ、相手がどんな魄を使うのか分からない。


ならば、まずは――


「龍包囲」


蓮の身体を魄が包む。


黒田も同時に龍包囲を纏った。


「――始め!」


先に動いたのは黒田だった。


一気に距離を詰める。


速い。


蓮は迎え撃とうと構えた。


黒田の拳が迫る。


蓮は身体を捻って避けた。


――だが。


黒田は拳を振り抜いた勢いのまま、蓮の横を通り過ぎる。


「……?」


蓮が振り返った瞬間だった。


「硬方印――」


黒田の手のひらに、魄が集まる。


一点へ。


圧縮されていく。


「硬圧」


ドンッ!!


何もない空間が歪んだ。


圧縮された魄が弾となって放たれ、蓮の死角から脇腹へ直撃する。


「ぐっ……!」


身体が横へ吹き飛んだ。


地面を転がり、蓮は片膝をつく。


「……っ」


脇腹を押さえる。


息を吸っただけで痛い。


まるで骨そのものを砕かれたような痛みだった。


「蓮!」


孝太郎が思わず声を上げる。


蓮は返事をしなかった。


口元を拭う。


指先についたのは――血。


「……マジかよ」


立ち上がる。


黒田は追撃の構えを取っていた。


「今のが硬圧だ」


黒田が淡々と言う。


「魄を圧縮して放つ。近距離でも遠距離でも使える」


「ご丁寧にどうも……」


蓮は笑ってみせた。


だが、呼吸は明らかに乱れている。


一発でここまで持っていかれた。


しかも、まだ相手の本領すら分からない。


黒田が再び踏み込む。


蓮も龍包囲で迎え撃った。


拳と拳がぶつかる。


蓮が蹴りを放つ。


黒田は腕で受け、そのまま拳を振り抜いた。


蓮は避ける。


その瞬間――


「硬圧」


ズドンッ!


今度は真正面から圧力弾が飛んできた。


「くっ!」


蓮は身体を逸らす。


完全には避けきれない。


肩を掠め、身体が大きく流れた。


黒田はその隙を逃さない。


距離を詰める。


拳。


蹴り。


そして、硬圧。


蓮はひたすら避け続けた。


龍包囲で身体能力を高めている。


それでも、黒田の攻撃は止まらない。


近距離では龍包囲による格闘。


距離が開けば硬圧。


しかも硬圧は、撃つ方向を読ませない。


正面から来たと思えば、次の瞬間には横から飛んでくる。


「……くそっ!」


蓮が地面を蹴る。


黒田へ接近する。


拳を振り抜く。


黒田は腕で受けた。


そのまま蓮の腹へ膝を入れる。


「ぐっ!」


蓮の身体が浮く。


追撃の硬圧。


蓮は咄嗟に腕を交差させた。


――ドンッ!!


吹き飛ばされる。


「……っ、はぁ……」


蓮は地面に手をついた。


息が苦しい。


脇腹はずっと痛んでいる。


身体のあちこちにもダメージが蓄積していた。


それでも――


蓮はまだ、龍演舞を使わなかった。


(……まだだ)


龍演舞を使えば、次の相手に切り札を見せることになる。


一度見せれば、相手は対策してくるだろう。


できることなら、この試合では出したくなかった。


だが。


黒田が歩いてくる。


蓮は立ち上がる。


足元が少しふらついた。


黒田の手に再び魄が集まる。


圧縮。


「硬圧」


蓮は横へ飛ぶ。


直後、地面が弾けた。


「……!」


さらに一発。


今度は反対側。


蓮は避ける。


三発目。


四発目。


次々と飛んでくる圧力弾。


蓮は走りながら避け続ける。


だが、脇腹の痛みで動きが鈍る。


「――そこだ」


黒田が手を向ける。


硬圧。


蓮の足元を撃ち抜く。


「うわっ!」


体勢を崩した。


そこへ黒田が迫る。


蓮は咄嗟に腕で防ぐ。


拳がぶつかる。


しかし、力負けした。


蓮の身体が後ろへ押し込まれる。


さらに一撃。


「ぐっ……!」


口から血が飛ぶ。


膝が落ちかける。


それでも蓮は立った。


観客の声が遠く聞こえる。


目の前には黒田。


そして、その手には再び圧縮された魄。


(……このままじゃ、勝てねぇ)


蓮は拳を握った。


龍演舞を使えば、まだ勝機はある。


だが――


ここまで隠してきた意味がなくなる。


それでも。


黒田が構える。


蓮はゆっくりと息を吐いた。


「……仕方ねぇか」


拳を開く。


足を一歩、前へ。


「ここまで隠して負ける方が、ダサいしな」


蓮の足元に――


小さな龍陣が浮かび上がった。

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