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無盃の将  作者: G
1

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試合の間

第四十六話


「――勝負あり!」


積田の声が響き、会場に歓声が沸き起こった。


堂本は地面に倒れたまま、動かない。


エブリン佐藤は拳銃を下ろし、静かに息を吐いた。


「第二試合、不動会所属――エブリン佐藤!」


勝者が告げられる。


龍牙連合側では、蓮が倒れた堂本を見つめていた。


「……負けたな」


「仕方ない相手は今大会で一番強いと言われている男だ」


隣にいた神崎が呟く。


「堂本もしっかりくらいついて闘っていた。相性はどうしようもない」


「ああ、そうだな」


孝太郎も試合を振り返る。


止弾は、当たらなければ意味がない。


堂本はそこに気づき、実際に動きを変えていた。


それでも最後は、エブリンの止弾に捕まった。


「……不動会、やっぱり簡単じゃないな」


孝太郎がそう呟いた、その時だった。


「積田さん」


後ろから声をかけられた。


振り返ると、龍牙連合の職員が一人立っている。


「少し、お話が」


積田はその表情を見て、何かを察した。


「どうした?」


職員が声を落とす。


「玄武組の事務所に、空き巣が入ったそうです」


「……何?」


積田の表情が変わった。


「被害の詳細はまだ確認中ですが、事務所内を荒らされた形跡があるとのことです」


「怪我人は?」


「今のところ、いないと」


積田は黙った。


ちらりと会場を見る。


次の試合を待つ選手たち。


観客の歓声。


そして、その中にいる孝太郎。


――今、伝えるべきか。


大会の最中だ。


余計なことを知らせれば、試合に集中できなくなるかもしれない。


だが。


玄武組の事務所が荒らされた。


孝太郎にとって、そこはただの事務所ではない。


積田はしばらく考えた。


そして、小さく息を吐く。


「……俺から話す」


「はい」


積田は孝太郎のもとへ向かった。


「孝太郎」


「はい?」


「少し話がある」


いつもと違う積田の声音に、孝太郎が顔を上げる。


「玄武組の事務所に、空き巣が入ったらしい」


「……え?」


孝太郎の表情が固まった。


「今のところ怪我人はいないらしい。ただ、詳しいことはまだ分からない」


「親父や澪は?」


真っ先に出た言葉だった。


積田は答える。


「病院にいるから問題ないと思う」


「……」


孝太郎は黙って携帯を取り出した。


「親父に電話をする」


「そうした方がいい」


積田は止めなかった。


孝太郎は少し離れた場所へ移動し、電話をかける。


数回の呼び出し音。


「……もしもし」


祀の声が聞こえた。


その瞬間、孝太郎の表情が少しだけ緩んだ。


「親父。今、大丈夫か?」


『どうした?』


「玄武組に空き巣が入ったって聞いた」


『ああ、そのことか』


「そのことかって……大丈夫なのか?」


『大丈夫だ。こっちは何ともない』


孝太郎は胸を撫で下ろす。


「そうか……」


『それより、お前は今、龍討祭だろ』


「……まあ」


『だったら、そっちに集中しろ』


「いや、俺は候補だから」


少し誤魔化すように言う。


『候補でも同じだ』


「……」


『お前も龍牙連合の一員として出てるんだろ』


「まあ、そうだけど」


『なら、最後まで全力出してこい』


祀の声は、いつも通りだった。


怒っているわけでもない。


ただ、言い聞かせるような声だった。


『ちゃんと楽しんで来い』


「……分かったよ」


『それと――』


祀が少し間を置く。


『なんでもない試合でのいい報告を期待してる』


孝太郎は一瞬、言葉を失った。


「……ああ」


それだけ答える。


『じゃあな』


「うん。また連絡する」


通話が切れた。


孝太郎はしばらく携帯を見つめていた。


「……大丈夫か」


孝太郎は携帯をポケットにしまった。


安心した。


そして、再び会場へ戻っていった。


――その頃。


病室。


祀はベッドの上で、静かに携帯を置いた。


「……まったく」


小さく笑う。


「これでいいんだろ」


その声に、


「はい。」


別の声が返ってきた。


祀が顔を上げる。


病室の入口。


そこに、一人の男が立っていた。


黒い服。


「……黒崎」


黒崎は一言


「取り引きをしませんか?」



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