↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無盃の将  作者: G
1

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
62/81

第一試合 続き



 玲司の拳が隼人へ迫る。


 隼人は腕で受け止め、そのまま拳を返した。


 玲司は身体を横へ流す。


 拳が頬を掠めた。


「速いな」


 隼人が呟く。


「そっちもな」


 玲司は笑わず、すぐに距離を詰め直した。


 今度は蹴り。


 隼人は腕で受ける。


 鈍い音が響いた。


 玲司が一度離れる。


 隼人も追う。


 二人の拳が再びぶつかった。


 互いに龍包囲・体で身体能力を高めている。


 それでも、決定的な一撃は入らない。


 玲司は隼人の攻撃をかわし、隼人は玲司の攻撃を受け止める。


 攻める。


 かわす。


 受ける。


 返す。


 何度繰り返しても、戦況は動かなかった。


 観客席からも、少しずつざわめきが起こる。


 候補選手の待機場所から試合を見ていた蓮が口を開いた。


「まだ龍包囲だけだな」


「ああ」


 隣に立つ孝太郎が答える。


「どっちも決め手がない」


「玲司も相手の田中ってやつも小手調べ感があるが、お互いに自分の魄の量を考えながら上手く戦っている」


「田中も玲司もそろそろ決着つけに動くかもな」


 蓮が試合場を見る。


「俺なら相手が息を切らしたタイミングで狙うな」


 孝太郎は頷いた。


「ああ、玲司はそのタイミングを伺ってらみたいだぜ」


 その言葉が聞こえたわけではない。


 だが、試合場にいる二人も同じことを感じていた。


 玲司と隼人が同時に距離を取る。


 互いに呼吸を整える。


 玲司が拳を握り直した。


「……このままじゃ決まらないな」


「ああ」


 隼人も構える。


「おでもそう思ってたところだ」


なんだこいつ…初めて会話したけどこんなやつなのかよ。と動揺したが少し驚きながらも集中し直した


 そして、二人の目が変わった。


 ほぼ同時に、龍印を結ぶ。


「迅方印――」


 玲司の身体中に魄が集まる。


「疾駆」


 次の瞬間。


 玲司の姿が一気に前へ跳んだ。


「速っ!」


 蓮が思わず声を上げる。


 孝太郎も目で追う。


「これが玲司の魄技か」


 玲司の速度は、先ほどまでとは明らかに違っていた。


 一歩踏み込むたびに加速し、その勢いが拳へ乗っていく。


 隼人も龍印を結ぶ。


「硬方印――」


 身体を覆う魄が一気に濃くなる。


「鋼殻」


 隼人の身体が硬化した。


 腕を振る。


 玲司が紙一重でかわす。


 その拳が試合場の床を打った。


 ――ドンッ!


「なんだよ、あれ……」


 蓮が目を見開く。


「身体そのものが硬いから一撃が増している」


 孝太郎が答える。


「ああ、防御だけじゃない。腕を硬くすれば、そのまま攻撃にも使える」


「でも、動きが遅くなってる」


「ああ。鋼殻はそういう系の技が多いからな」


 隼人が再び拳を振る。


 玲司はかわす。


 さらに加速する。


 そして――。


 ドンッ!


 玲司の拳が隼人の腹へ入った。


 しかし、隼人は倒れない。


 硬化した身体が衝撃を受け止める。


「効かねぇな!」


 隼人が笑い、拳を振り抜く。


 玲司は後ろへ飛んでかわした。


 だが、その拳が頬を掠める。


 玲司の身体が大きくよろけた。


「……!」


 蓮が息を呑む。


「今の、当たってか?」


「あぶねぇ」


 孝太郎が答える。


 疾駆によって速度と攻撃力を上げている玲司。


 その代わり、防御力はほとんどない。


 一発でもまともに受ければ、勝負が終わる。


 一方の隼人も、鋼殻を長時間維持することはできない。


 どちらも、長引けば不利になる。


 玲司が再び走り出した。


 加速。


 さらに加速。


 隼人へ向かって一直線に迫る。


 隼人は拳を構えた。


「こい」


 玲司の拳と、隼人の硬化した腕がぶつかる。


 ――轟音。


 玲司が弾かれる。


 だが、すぐに地面を蹴った。


 さらに加速する。


 隼人の表情が歪む。


「まだ速くなるのか……!」


 玲司は止まらない。


 疾駆は加速するほど、その力を増していく。


 隼人が腕を上げる。


 玲司が踏み込む。


 ――その瞬間。


 隼人の身体を覆っていた魄が、一瞬だけ揺らいだ。


 鋼殻の限界だった。


 玲司はそれを見逃さなかった。


「そこだ!」


 最後の一歩。


 一気に間合いを詰める。


 最大まで加速した拳が、隼人の胸へ叩き込まれた。


 ――ドンッ!!


 隼人の身体が大きく吹き飛ぶ。


 数メートル転がり、試合場の端で止まった。


 隼人は起き上がろうとする。


 だが、膝に力が入らない。


「……」


 拳を握る。


「もう……無理だべ」


 積田が立ち上がった。


「勝負あり!」


 会場に声が響く。


「勝者――龍牙連合所属、神崎玲司!」


 大きな歓声が上がった。


 玲司は荒い息を吐きながら、隼人を見る。


 そして小さく頭を下げた。


 試合場の外では、蓮が孝太郎を見る。


「玲司、強かったな」


「ああ」


 孝太郎は頷く。


「でも、魄の相性で俺に武があった」


「相性?」


「あいつの鋼殻は強い。でも、動きが遅くなる。玲司の疾駆とは相性が悪かった」


 孝太郎は試合場を見る。


「逆に、玲司の疾駆は防御が弱い。相手によっては一発で終わってたかもな」


 蓮は少し考える。


「なるほどな」


 孝太郎は静かに次の試合場へ目を向けた。


 龍討祭は、まだ始まったばかりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。