第一試合
第四十四話
積田によるルール説明が終わると、五人は一度、龍牙連合の選手が集まる場所へ戻った。
「それじゃあ、候補を決めるぞ」
神崎が言う。
四人の間に、少しだけ沈黙が流れた。
「俺は嫌だぞ」
堂本が真っ先に口を開いた。
「俺も」
神崎も続く。
東も苦笑しながら首を横に振った。
「候補ってことは、いつ出るか分からないまま待つんだろ? できれば最初から出たいな」
三人とも同じ考えだった。
蓮も腕を組んだまま考えている。
「だいたいなんで候補なんてものを作ったんだ。五人全員が出ればいいのによ」
「まぁ色々あんだろ」
堂本がにごした。
孝太郎が口を開いた。
「じゃあ、俺が候補になる」
「孝太郎?」
蓮が振り向く。
「俺ならいいだろ」
孝太郎は四人を見る。
「俺は龍術が使えない。相手がどんな奴か見てから出た方がいい」
誰もすぐには答えなかった。
やがて神崎が頷く。
「確かに、それなら孝太郎が候補がいいな」
「俺も異論ない」
堂本も頷く。
東も続いた。
「むしろ、その方がいいと思う」
最後に蓮が孝太郎を見る。
「本当にいいのか?」
「ああ」
孝太郎は迷いなく答えた。
「俺より他の四人が出る方が勝てるなら喜んで候補になるさ」
神崎が積田に候補と試合に出るメンバーを伝えた。
積田もそのやり取りを見ていた。
「決まりだな」
こうして、龍牙連合の候補選手は荒木孝太郎に決まった。
孝太郎を除く四人が、最初の試合へ出場する。
その直後だった。
「第一試合、選手入場!」
会場に声が響く。
観客席から歓声が上がった。
神崎玲司が試合場へ向かう。
向かい側からは、不動会所属の隼人が姿を現した。
二人が試合場の中央で向かい合う。
「第一試合――」
場内アナウンスが響く。
「龍牙連合所属、神崎玲司!」
観客席から歓声が上がる。
「対するは、不動会所属、田中隼人!」
こちらにも歓声が巻き起こった。
二人が一定の距離を取る。
積田が試合場の中央へ立った。
「両者、構え」
玲司が腰を落とす。
隼人も静かに拳を握った。
二人の身体から、ほぼ同時に魄が巡り始める。
龍包囲。
二人同時に技を使う!
「――始め!」
一瞬で、二人が同時に踏み込んだ。
拳と拳がぶつかる。
――ドンッ!
衝撃が試合場に響く。
「……!」
玲司が一歩下がる。
隼人も拳を引いた。
互いに相手の力を確かめるように、再び構える。
玲司が先に動いた。
低く踏み込み、右拳を放つ。
隼人は腕を上げて受け止める。
そのまま玲司の腕を払い、今度は隼人が踏み込んだ。
拳が迫る。
玲司は身体を捻ってかわした。
「速いな」
隼人が呟く。
「そっちもな」
玲司が答える。
再び二人が距離を詰めた。
まだ、互いに魄の性質を見せ合わない。
龍包囲だけで、純粋な身体能力をぶつけ合う。
龍討祭――最初の一戦が、始まった。




