龍討祭
第四十二話
会長室の扉が開いた。
「失礼します」
新しく部屋の中には三人の若者が入ってきた。
「お待たせしました」
三人が揃って蒼真の前に立つ。
先頭にいた男が一歩前へ出た。
「葵組、神崎玲司です」
「同じく、堂本豪」
「東楓です」
三人はそれぞれ頭を下げる。
蒼真は頷くと、三人の後ろにいる蓮と孝太郎へ視線を向けた。
「今回の龍討祭には、この五人で出てもらう」
その言葉に、神崎たちが蓮と孝太郎を見る。
数秒の沈黙。
「……この二人が?」
神崎が蓮を見る。
「黒龍を倒したっていう?」
「らしいな」
堂本も孝太郎へ視線を移す。
「でも、蓮って龍包囲しか使えないんだろ?」
「……」
蓮は黙って三人を見る。
東が小さく笑った。
「しかも龍神組と玄武組って、龍牙連合の中じゃ下の方だろ?」
露骨な言い方だった。
蓮の眉が少し動く。
孝太郎も三人を見る。
初対面で、いきなりこの態度。
正直、感じは良くない。
だが、二人とも何も言い返さなかった。
今回ここにいる理由は、三人と張り合うためじゃない。
黒崎との戦いで、龍牙連合は大量の龍魄を失った。
その責任が自分たちにもある。
それでも蒼真は、もう一度チャンスをくれた。
だったら――。
孝太郎は蒼真を見る。
「……もう失敗しない」
小さく呟いた。
蓮も頷く。
「ああ」
蒼真は五人を見渡した。
「話はこれくらいでいいな」
立ち上がる。
「五人とも、健闘を祈る」
「はい!」
三人が返事をする。
蓮と孝太郎も頷いた。
蒼真はそれだけ言うと、そのまま会長室を出ていった。
扉が閉まる。
残された五人。
蓮が三人へ向き直った。
「じゃあ、改めて自己紹介するか」
蓮が先に口を開く。
「俺は蓮。白虎組だ」
「荒木孝太郎。玄武組」
続いて二人が名乗る。
それに対して、神崎が軽く頷いた。
「神崎玲司。葵組」
「堂本豪」
「東楓」
三人も簡単に名乗る。
「三人とも葵組なんだな」
孝太郎が聞く。
「ああ。Somaliさんのところの組か」
神崎が答える。
「今回の話も聞いてる」
「そうか」
蓮が頷く。
だが、堂本はまだ蓮を見ていた。
「黒龍を倒したっていうのは本当なんだよな?」
「いや、俺はほとんど何もしてない」
「へえ……」
堂本は蓮を上から下まで見る。
「龍包囲しか使えないもんな」
「……因みにあの時は龍包囲も使えなかった」
「よく龍討祭に出る気になったな」
蓮の表情が少しだけ険しくなる。
「別にいいだろ」
「まあな」
堂本はそれ以上言わなかった。
東も蓮を見る。
「実際、戦ってみれば分かるか」
「そうだな」
蓮は短く返した。
孝太郎はそんな蓮を横目で見る。
三人の態度は気に入らない。
だが、それ以上に頭に浮かぶのは会長の顔だった。
黒崎との戦いで俺たちだけでは何もできなかった。
それでも、会長は自分たちにチャンスや時間をくれた。
今回の龍討祭は、その失敗を取り返すための機会だ。
「蓮」
「ん?」
「俺たちは俺たちの仕事をしよう」
孝太郎が言う。
「……ああ」
蓮も笑った。
「龍魄、持って帰ろうぜ」
「そうだな」
五人は会長室を出る。
そこからは、移動しながらそれぞれのことを話した。
神崎は自分の戦い方について。
堂本は得意な距離について。
東は自分の使う技について。
蓮と孝太郎も、これまでの戦いについて簡単に話した。
最初こそ険悪だった空気も、話しているうちに少しずつ和らいでいった。
そして――。
「着いたぞ」
車が止まった。
五人が外へ出る。
目の前には、大きな会場が広がっていた。
周囲には龍牙連合だけではない、数多くの参加者が集まっている。
その中央に掲げられている文字。
――龍討祭。
蓮がその文字を見上げる。
「……始まるな」
孝太郎も会場を見る。
「ああ」
五人は受付へ向かって歩き出した。
こうして、龍牙連合代表としての龍討祭が始まった。




