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無盃の将  作者: G
1

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組み手

第三十九話


修行の終わり


東雲組の道場。


蓮と孝太郎は、少し離れた位置で向かい合っていた。


その二人の間に、積田が立つ。


「最後に一つだけやる」


積田が二人を見回した。


「これまでの修行の成果を見る。組み手だ」


蓮が拳を握る。


孝太郎は拳銃を確認した。


「ルールは単純だ」


積田が続ける。


「相手を戦闘不能にした時点で終了。殺すような攻撃は禁止。銃も使用していい。ただし、急所は狙うな」


「分かった」


蓮が答える。


「了解」


孝太郎も頷いた。


積田が一歩下がる。


「それじゃあ――始め!」


二人が同時に動いた。


蓮が龍包囲を発動する。


身体を巡る魄が強まり、一気に踏み込んだ。


孝太郎も迎え撃つ。


拳がぶつかる。


一度。


二度。


三度。


互いに距離を取った。


「……やるな」


蓮が笑う。


「そっちこそ」


再びぶつかる。


蓮は間合いを詰めながら攻撃を続けた。


孝太郎が拳銃を持っている以上、距離を取れば不利になる。


だが、拳銃の修行をしてるなら距離詰めて接近戦に持ち込んだ方が戦いやすいかも。


蓮はそう考えていた。


だが――


「近距離戦の方がいいと思ったか?」


孝太郎が言った。


「……!」


蓮が拳を振る。


孝太郎は身体を傾ける。


拳が頬をかすめる。


続けて蓮が蹴りを放つ。


孝太郎は一歩下がった。


また拳。


かわす。


さらに一撃。


かわす。


龍包囲によって強化された蓮の攻撃速度は、上がってる。


それでも――


一発も当たらない。


「くっ……!」


蓮が距離を詰める。


孝太郎はその動きを見ていた。


黒崎との戦い。


あの時も、相手の攻撃を近距離でかわし続けていた。


それは今も変わらない。


蓮の攻撃が来る。


孝太郎は身体を捻る。


拳が空を切る。


蓮が振り返る。


その瞬間、孝太郎の拳が飛んできた。


蓮は腕で受ける。


「……!」


二人は同時に後ろへ下がった。


しばしの沈黙。


蓮が息を整える。


「龍包囲だけじゃ……当てられないか」


そして、蓮は構えを変えた。


足を少し開く。


腕をゆっくり動かす。


「……それ、例の技か?」


孝太郎が気づく。


蓮は答えない。


足元に、淡い光が浮かび始めた。


一本。


二本。


光の線が繋がっていく。


「龍演舞……」


蓮が呟いた。


まだ完璧ではない。


だが、今の自分にできるところまでやる。


その瞬間。


孝太郎が拳銃を抜いた。


「だったら、こっちも使うか」


――パンッ!


蓮が身体を捻る。


弾丸が横を抜けた。


だが――


「!」


避けた瞬間。


別方向から拳が飛んできた。


蓮は首を逸らす。


拳が頬をかすめる。


「危ねえ……!」


蓮が距離を取る。


孝太郎は追う。


「次だ」


踏み込む。


蹴り。


蓮は身体を捻って避ける。


しかし――


「そこだ!」


孝太郎の目が鋭くなる。


蓮の避け方が、ほんの一瞬だけ甘くなった。


孝太郎は見逃さなかった。


拳銃を向ける。


――パンッ!


「ぐっ……!」


蓮の腹に弾が入った。


血が滲む。


蓮の身体がよろける。


「蓮!」


それでも孝太郎は止まらない。


一歩踏み込む。


そして――


顔面へ蹴りを叩き込んだ。


「――っ!」


蓮の身体が吹き飛ぶ。


床に倒れた。


動かない。


「そこまで!」


積田の声が響いた。


試合終了。


「蓮!」


すぐに医療班が駆け寄る。


蓮は意識を失っていた。


その一方で、孝太郎もその場に立っていた。


だが――


「……あれ?」


身体がふらつく。


孝太郎もその場に膝をついた。


「おい!」


丸野が駆け寄る。


「無茶しすぎだ」


丸野が孝太郎の肩を支える。


積田も反対側から支えた。


「お前も診てもらえ」


「……俺は大丈夫……」


「大丈夫な奴はそんな顔してない」


「……そうか?」


孝太郎は苦笑した。


そのまま医療班へ連れていかれた。


⸻


しばらくして。


蓮が目を覚ました。


ぼんやりと天井を見る。


「……ここ、どこだ?」


「医務室」


隣から声がした。


蓮が顔を向ける。


そこには孝太郎がいた。


まだ少しふらついている。


そして――


「俺の勝ちだな」


ニヤッと笑う。


蓮は眉を寄せた。


「うるせ〜……」


「ははっ」


「……でも」


蓮は少しだけ笑った。


「強かったな」


孝太郎の笑みが少し変わる。


「お前もな」


二人はしばらく黙っていた。


そして孝太郎が口を開く。


「なあ、蓮」


「ん?」


「黒崎の時さ」


孝太郎は蓮を見る。


「なんで、あそこまで俺を助けてくれたんだ?」


蓮は少し考えた。


そして、当たり前のことを言うように答えた。


「組は違くても、俺はお前を仲間だと思ってる」


孝太郎が黙って聞く。


「仲間が助けてほしいって言えば、とことん助ける」


蓮は笑った。


「それが俺の生き様なんだ」


孝太郎は何も言わなかった。


ただ、少しだけ笑った。


二人の間に、言葉以上のものが残った。

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