自分たちを見つめ直す
第三十一話
病院へ着くと、孝太郎と蓮はそのまま病室へ向かった。
そこには、すでに会長――九条蒼真がいた。
「来たか」
「会長……」
孝太郎と蓮が頭を下げる。
今回あった内容を全て会長に話した。
蒼真は二人を見ると、椅子から立ち上がった。
「まずは、よくやったな」
その一言に、二人が顔を上げる。
「予定にはなかった増井まで現れた。黒崎も想定以上の力を使ってきた。それでも三人で状況をひっくり返したんだ。丸野も含めて、よく対応した」
「……ありがとうございます」
孝太郎が答える。
蓮も小さく頷いた。
だが、蒼真の表情はそこで少しだけ変わった。
「ただし、一つ言っておく」
「……はい」
「今回の戦い、お前ら二人だけではどうなっていた?」
蓮と孝太郎は黙った。
答えは、二人とも分かっている。
丸野がいなければ、増井との戦いは成立しなかった。
黒崎が龍化した後も、最後に倒したのは丸野だった。
「今回の任務は、もともとお前ら二人で行く予定だった」
蒼真の言葉が病室に響く。
「結果的に丸野が加わったから助かった。だが、それは最初から分かっていたことじゃない」
孝太郎は拳を握った。
蓮も俯いたまま、黙っている。
「任務そのものは成功だ。だが……お前ら二人の戦い方は、丸野に頼りすぎていた」
その言葉に、二人は反論できなかった。
蓮が静かに口を開く。
「……俺、もっと強くなります」
孝太郎も顔を上げた。
「俺もです」
蒼真が二人を見る。
「2人ともいい心がけだ」
少しだけ口元を緩める。
「なら、ちょうどいい。今回の件で、お前らにはもう一段上を目指してもらう」
「一段上……?」
「修行だ」
蒼真はそう言って、携帯電話を取り出した。
「俺が見てやりたいところだが、会長としての仕事が山積みでな」
「会長が修行を見てくれるんじゃないんですか?」
蓮が思わず聞く。
「俺が毎日付き合えると思うか?」
「……ですよね」
「だろ」
蒼真は電話をかける。
「お前らを見るのは東雲組の若頭――積田だ」
電話が繋がる。
「積田か。今、病院に来られるか?」
短いやり取りの後、蒼真は電話を切った。
「すぐ来るそうだ」
それからしばらくして。
病室の扉が開いた。
「失礼します」
入ってきたのは、東雲組若頭・積田だった。
積田は部屋を見回し、蒼真に目を向ける。
「会長、急に呼び出して何かと思えば……」
「話は簡単だ」
蒼真が二人を指す。
「こいつらの修行を見てほしい」
積田は孝太郎と蓮を見る。
「……この二人を?」
「ああ」
「理由は?」
「今回の任務で、二人とも自分の力不足を痛感した。そして、東雲組は組長が不在で少し仕事を減らすため、時間ができるだろう」
積田は二人をしばらく見つめた。
そして、
「なるほどな」
短く呟いた。
「分かりました。私も彼らに丸野の頭を救ってもらった恩がありますから」
蒼真が答える。
「内容はお前に任せる。ただし、二人を同じようには扱わなくていい」
「……というと?」
「蓮と孝太郎じゃ、抱えてる問題が違う」
積田が二人を見る。
蓮は龍包囲しか使えない。
孝太郎には、そもそも龍術そのものがない。
「分かりました。」
積田が頷いた。
「なら、それぞれ別のやり方で鍛えます」
蓮が尋ねる。
「明日からですか?」
「ああ」
積田は即答した。
「明日の朝、東雲組に来い」
「分かりました」
蓮が頷く。
孝太郎も続いた。
「俺も行きます」
「寝坊するなよ」
「もちろんです」
「ならいい」
蒼真はそんな二人を見て、静かに息を吐いた。
今回の任務で、二人は自分たちの限界を知った。
だからこそ――
次は、同じ結果にはしない。
それぞれの戦い方を見つけるための修行が、明日から始まる。




