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無盃の将  作者: G
1

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39/82

反撃!! 続き

蓮と孝太郎は、とっさに距離を取った。


さっきまで黒崎が立っていた場所には、巨大な影が広がっている。


「……どこだ?」


孝太郎が辺りを見回す。


返事はない。


その瞬間、床の影が大きく揺れた。


「蓮、来るぞ!」


「分かってる!」


二人が左右へ飛んだ。


直後、二人がいた場所から黒い刃のような影が突き出した。


ズガンッ!


床を貫いた影が、ゆっくりと形を変える。


「今度はそこか!」


蓮が龍包囲を強め、影へ拳を叩き込む。


バキッ!


影が砕ける。


だが――


砕けたはずの影が、再び床へ広がっていく。


「……消えない?」


蓮が目を細める。


「違う」


孝太郎が周囲を見た。


「影になった物が、元に戻ってない」


壁も、床も、散らばった瓦礫も。


さっきまでそこにあったものが、黒い影へと変わっている。


「つまり……」


「この場所全部が、あいつの影になってる」


その言葉に、蓮が舌打ちした。


「最悪だな」


黒崎の声が響く。


「ようやく気づきましたか」


声の方向へ二人が振り向く。


しかし、そこに黒崎はいない。


「私が影を探す必要はありません」


床が揺れる。


「ここにあるもの全てが――」


壁から黒崎の顔だけが浮かび上がった。


「私の影です」


蓮が拳を構える。


「くそ、影が多くてあいつがどこにいるか分からねぇ」


一気に踏み込む。


龍包囲で強化した拳が壁を打ち抜いた。


ドゴォン!


壁の影が大きく砕ける。


その向こうから黒崎が姿を現した。


「そこだ!」


蓮が追撃しようとする。


しかし黒崎の身体が再び黒く崩れた。


「また……!」


影が床へ沈む。


「影渡り……!」


蓮が周囲を見る。


だが、もうどこを見ても影だらけだった。


次の瞬間。


「――そこだ!」


孝太郎が叫んだ。


蓮が振り向く。


黒崎が孝太郎の背後から現れていた。


「孝太郎!」


黒崎の手が伸びる。


孝太郎は振り返りざまに腕で防ぐ。


だが――


黒崎の指先が、ほんの一瞬だけ孝太郎の腕に触れた。


「……っ!」


孝太郎の腕が黒く染まる。


「何だこれ!」


黒崎が笑う。


「触れたものも、影にできるんですよ」


黒く染まった部分が、ゆっくりと広がっていく。


蓮がすぐに孝太郎の腕を掴んだ。


「孝太郎!」


「大丈夫だ!」


孝太郎が腕を振り払う。


「まだ動く!」


黒崎が再び距離を取る。


「こちらも時間がないですから」


「何?」


「気にしないでください。早めに終わらせるだけですから」


黒崎が周囲を見渡す。


「だからこそ――」


その姿が、また影へと変わる。


「それにこの技は龍魄の消費も激しい」


蓮が拳を握り直した。


「なるほど、ならこの技にも時間制限があるはずだ」


孝太郎も構える。


「あぁ、だが龍魄は大量に船に積んであるあれを使いながら闘われると、こっちに勝ち目はない」


そして、丸野と増井の戦いへ目を向けた。


「早くあっちの加勢に行かないと」


蓮がその意味を理解する。


「ああ」


二人は同時に走り出した。


その背後から、無数の影が追いかけてくる。


黒崎は影の中で笑っていた。


「逃がしませんよ」


――戦いは、さらに激しさを増していった。

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