反撃!! 続き
蓮と孝太郎は、とっさに距離を取った。
さっきまで黒崎が立っていた場所には、巨大な影が広がっている。
「……どこだ?」
孝太郎が辺りを見回す。
返事はない。
その瞬間、床の影が大きく揺れた。
「蓮、来るぞ!」
「分かってる!」
二人が左右へ飛んだ。
直後、二人がいた場所から黒い刃のような影が突き出した。
ズガンッ!
床を貫いた影が、ゆっくりと形を変える。
「今度はそこか!」
蓮が龍包囲を強め、影へ拳を叩き込む。
バキッ!
影が砕ける。
だが――
砕けたはずの影が、再び床へ広がっていく。
「……消えない?」
蓮が目を細める。
「違う」
孝太郎が周囲を見た。
「影になった物が、元に戻ってない」
壁も、床も、散らばった瓦礫も。
さっきまでそこにあったものが、黒い影へと変わっている。
「つまり……」
「この場所全部が、あいつの影になってる」
その言葉に、蓮が舌打ちした。
「最悪だな」
黒崎の声が響く。
「ようやく気づきましたか」
声の方向へ二人が振り向く。
しかし、そこに黒崎はいない。
「私が影を探す必要はありません」
床が揺れる。
「ここにあるもの全てが――」
壁から黒崎の顔だけが浮かび上がった。
「私の影です」
蓮が拳を構える。
「くそ、影が多くてあいつがどこにいるか分からねぇ」
一気に踏み込む。
龍包囲で強化した拳が壁を打ち抜いた。
ドゴォン!
壁の影が大きく砕ける。
その向こうから黒崎が姿を現した。
「そこだ!」
蓮が追撃しようとする。
しかし黒崎の身体が再び黒く崩れた。
「また……!」
影が床へ沈む。
「影渡り……!」
蓮が周囲を見る。
だが、もうどこを見ても影だらけだった。
次の瞬間。
「――そこだ!」
孝太郎が叫んだ。
蓮が振り向く。
黒崎が孝太郎の背後から現れていた。
「孝太郎!」
黒崎の手が伸びる。
孝太郎は振り返りざまに腕で防ぐ。
だが――
黒崎の指先が、ほんの一瞬だけ孝太郎の腕に触れた。
「……っ!」
孝太郎の腕が黒く染まる。
「何だこれ!」
黒崎が笑う。
「触れたものも、影にできるんですよ」
黒く染まった部分が、ゆっくりと広がっていく。
蓮がすぐに孝太郎の腕を掴んだ。
「孝太郎!」
「大丈夫だ!」
孝太郎が腕を振り払う。
「まだ動く!」
黒崎が再び距離を取る。
「こちらも時間がないですから」
「何?」
「気にしないでください。早めに終わらせるだけですから」
黒崎が周囲を見渡す。
「だからこそ――」
その姿が、また影へと変わる。
「それにこの技は龍魄の消費も激しい」
蓮が拳を握り直した。
「なるほど、ならこの技にも時間制限があるはずだ」
孝太郎も構える。
「あぁ、だが龍魄は大量に船に積んであるあれを使いながら闘われると、こっちに勝ち目はない」
そして、丸野と増井の戦いへ目を向けた。
「早くあっちの加勢に行かないと」
蓮がその意味を理解する。
「ああ」
二人は同時に走り出した。
その背後から、無数の影が追いかけてくる。
黒崎は影の中で笑っていた。
「逃がしませんよ」
――戦いは、さらに激しさを増していった。




