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無盃の将  作者: G
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反撃!!

第二十五話


蓮の拳が黒崎の頬を捉えた。


「――ぐっ!」


黒崎の身体が大きく弾かれ、床を滑っていく。


蓮はすぐに追った。


黒崎が身を起こすより先に、龍包囲を纏った拳を床へ叩き込む。


轟音とともに、黒崎が逃げ込もうとしていた影が砕け散った。


「……これで、また一つ」


蓮が周囲を見渡す。


さっきまであれほどあった影は、ほとんど残っていない。


孝太郎もそれに気づいていた。


「蓮」


「ああ」


二人は短く視線を交わす。


「影を消していけば、あいつは術を使えなくなる」


「たぶんな」


黒崎は立ち上がる。


その表情には、さっきまでの余裕がない。


「……随分と、好き勝手やってくれますね」


「逃げる場所がなくなって焦ってるぜ」


蓮が一歩踏み込む。


黒崎は後ろへ下がる。


だが、その先にはもう影がない。


蓮の拳が黒崎の腹へ突き刺さった。


「ぐっ……!」


黒崎が身体を折る。


そこへ孝太郎が踏み込み、黒崎の腕を掴んだ。


「終わりだ」


そのまま投げ飛ばす。


黒崎の身体が床へ叩きつけられた。


「……っ」


黒崎は起き上がろうとする。


そして龍印を結んだ。


「影方印――」


何も起こらない。


黒崎の眉が僅かに動いた。


もう一度、印を結ぶ。


それでも同じだった。


蓮が確信する。


「やっぱりな」


黒崎を見下ろしながら言う。


「影がなくなったら、術も使えない」


黒崎は何も答えなかった。


ただ、荒い息を吐きながら二人を睨んでいる。


孝太郎は丸野の方へ視線を向けた。


まだ戦っている。


増井の攻撃を受けながら、丸野も必死に食らいついていた。


「蓮、丸野さんのところへ行くぞ」


「ああ」


蓮が黒崎に背を向ける。


その瞬間だった。


「……まだだ」


蓮の足が止まる。


孝太郎も振り返った。


黒崎がゆっくりと立ち上がっている。


「まだ……終わってませんよ」


「何?」


蓮が構える。


黒崎は俯いたまま、静かに龍印を結んだ。


「あなたたちは……一つ勘違いしている」


黒崎の足元。


そこには、ほんの僅かな影しかない。


「影がなければ、術が使えない」


黒崎が顔を上げる。


口元が僅かに歪んだ。


「なら――」


黒崎の身体から、一気に魄が溢れ出した。


「――作ればいい」


瞬間。


黒崎の足元から黒い影が広がった。


床を這い、壁を駆け上がる。


周囲の瓦礫が黒く染まっていく。


「……なんだ、これ」


孝太郎が呟く。


床が。


壁が。


柱が。


まるで何もかもが黒い液体へ変わっていくように、次々と影へ変わっていく。


蓮が一歩下がる。


「嘘だろ……」


そして――


黒崎自身の腕が黒く染まった。


指先から肩へ。


肩から胸へ。


人間の身体が、ゆっくりと影へ変わっていく。


黒崎が笑った。


「ここからが……本当の戦いですよ」


黒崎の姿が、完全に黒い影へと変わった。


そして次の瞬間。


その影が床へ沈む。


「――消えた!」


蓮が叫ぶ。


直後。


背後から黒崎の声が響いた。


「影方印・万影転化。」


「俺の影は全ての色を凌駕する」


蓮と孝太郎が振り返る。


そこには、先ほどまで存在しなかった巨大な影が広がっていた。

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