作戦
第二十一話
三人は本部の資料室へ向かった。
丸野が机の上に一枚の資料を置く。
「今回の任務についてだ」
孝太郎と蓮が資料を覗き込む。
そこには簡潔に任務内容が記されていた。
――黒崎の追跡。
――奪われた龍魄の奪還。
「黒崎を追う前に、一つ説明しておく」
丸野が資料を閉じた。
「鳴神所のことについてだ」
丸野は二人を見る。
「龍牙連合と鳴神所。この二つには大きな違いがある」
「違い?」
「国から支援を受けているかどうかだ」
孝太郎が首を傾げる。
「国から支援……?」
「国から認可を受けた龍術師の組織のことだ」
丸野は続ける。
「龍牙連合は認可を受けている。だから国から正式に龍術師の組織として認められている」
「じゃあ、鳴神所は?」
「認可を受けていない」
孝太郎の顔が険しくなる。
「つまり……非合法なんですか?」
「そこまで単純な話じゃない」
丸野が首を横に振る。
「認可を受けていないことと、存在そのものが違法であることは別だ。ただ、国から龍術師組織として認可されていない以上、龍牙連合とは立場が違う」
蓮が考え込む。
「でも、どうしてそんなに認可が重要なんですか?」
「一番大きいのは――龍魄だ」
丸野が答える。
「認可を受けた組織には、国から龍魄が支給される」
孝太郎が目を見開く。
「……国から?」
「ああ」
だからこそ、国から一定量を支給されることは、龍術師にとって大きな意味を持つ。
「つまり龍牙連合は、国から龍魄を手に入れられる」
「そういうことだ」
「じゃあ、鳴神所は?」
「自分たちで手に入れるしかない」
孝太郎は昨日の出来事を思い出した。
龍魄商店。
大量の龍魄。
そして、それを奪っていった黒崎。
「だから……」
「今回の件も、その可能性が高い」
丸野が頷く。
「鳴神所が龍魄を狙う理由は、それだけじゃないだろう。だが、少なくとも龍魄が貴重なのは間違いない」
蓮が資料を見る。
「でも、そんな組織が龍牙連合に仕掛けてきたら、警察は動かないんですか?」
丸野は少し間を置いた。
「そこが厄介なんだ」
「……?」
「龍術師同士の争いに、警察は簡単には介入できない」
孝太郎が眉を寄せる。
「どうしてです?」
「龍術を使うからだ」
丸野は淡々と答えた。
「龍術師同士の戦闘は、一般人同士の喧嘩とは違う。龍術が使われれば被害の規模も変わる。だからこそ、国は認可を受けた組織に、龍術師同士の問題を処理する役割も認めている」
「……なるほど」
「だから鳴神所は、今回みたいなやり方を取れる」
孝太郎の表情が変わる。
「表立って龍牙連合と戦うんじゃなく、裏で龍魄を奪う」
「そういうことだ」
丸野は資料を閉じた。
「鳴神所にとって、龍魄は貴重な資源だ。そして俺たちにとっても、龍魄を奪われることは看過できない」
孝太郎は拳を握る。
「……絶対に取り戻します」
丸野は頷いた。
「そのために、俺たち三人で黒崎を追う」
「目的地は縦須賀だ。」
そして三人は、鳴神所を追うために本部を後にした。




