対決 続き
黒崎が踏み込む。
孝太郎も同時に前へ出た。
拳と拳がぶつかる。
「――ッ!」
衝撃で、二人の足元に亀裂が走った。
孝太郎は腕に力を込める。
だが、徐々に押されていく。
「……強ぇ」
黒崎の龍術は、今まで戦ってきた相手とは明らかに違った。
力任せではない。
龍魄の力を無駄なく身体へ通し、一つ一つの動きに乗せている。
孝太郎は一度距離を取った。
「どうした?」
「……うるせぇ」
呼吸を整える。
背後では、龍魄を運び出している連中がいる。
このまま黒崎と戦い続ければ、龍魄は全部持っていかれる。
「だったら……」
孝太郎は黒崎ではなく、その奥を見る。
「先にあっちを止める!」
一気に駆け出す。
「させるか」
黒崎が追う。
孝太郎は振り返らず、倉庫の奥へ走った。
だが――
「甘い」
黒崎が一瞬で距離を詰める。
孝太郎の前に回り込み、拳を振り抜いた。
「ぐっ!」
孝太郎は両腕で受ける。
身体が後ろへ吹き飛ぶ。
そのまま積まれていた木箱へ叩きつけられた。
「……くそっ」
立ち上がろうとした、その時。
倉庫の入口から声が響いた。
「黒崎さん!」
黒崎が振り返る。
「終わりました」
龍魄を運んでいた男たちが戻ってきた。
その手には、いくつもの容器が入った箱。
黒崎はそれを確認すると、小さく頷いた。
「よし」
孝太郎の顔が険しくなる。
「待て……!」
立ち上がろうとする。
しかし、身体が思うように動かない。
黒崎はそんな孝太郎を見下ろした。
「あなた、龍術が使えないんですね」
「……うぅ」
「私はまだ龍包囲しか使ってないですよ」
「それとも盃を交わしてないんですか」
孝太郎が立ち上がる。
黒崎はそれを見て、少しだけ目を細めた。
「お前には関係ない」
「それにまだ終わってねぇぞ」
孝太郎が構える。
黒崎もまた構えた。
だが――
「黒崎さん、時間がありません」
仲間の声が飛ぶ。
「何事だ」
「増井のオジキがすぐに戻ってこいと」
口封じしないと俺の計画に支障が黒崎は焦った。
そして龍魄の入った箱へ視線を落とす。
「……そうだな」
黒崎は構えを解いた。
「今日は退くとしましょう」
「待て!」
「俺を殺すんじゃ無かったのか?」
「…..ち」
孝太郎が追おうとする。
しかし黒崎は最後に一言だけ残した。
「野暮用が出来ましてね」
「……!」
「殺せなかったのが残念です。」
そのまま仲間たちと倉庫を出ていく。
「待て!」
孝太郎は追おうとする。
だが、もう姿はなかった。
静まり返った倉庫。
床には壊れた木箱と、散らばった容器だけが残されている。
孝太郎は拳を握った。
「……なんなんだ、あいつ」
龍魄を奪われたことよりも。
黒崎が祀の病名を知っていることが、頭から離れなかった。
そして孝太郎は知らない。
黒崎が、祀の病気についてどこまで知っているのかを。
「クソ、とりあえず帰るか」




