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無盃の将  作者: G
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対決

第十七話


二人の龍術が、正面からぶつかった。


轟音とともに、倉庫の床が大きく揺れる。


孝太郎は歯を食いしばり、押し込まれる身体を必死に支えた。


「くっ……!」


黒崎の龍術は重かった。


単純な力だけではない。


動きに無駄がなく、一撃一撃が確実に孝太郎の隙を狙ってくる。


「玄武組ってのは……」


黒崎が龍術をまとわせた拳を振り抜く。


孝太郎は身を捻ってかわす。


拳が壁を砕いた。


「こんなものか?」


「……舐めんな!」


孝太郎が踏み込む。


拳を繰り出すが、黒崎は腕一本で受け止めた。


そのまま孝太郎の腕を掴み、身体を投げ飛ばす。


「ぐっ!」


孝太郎の身体が床を転がる。


すぐに立ち上がろうとする。


だが――


「孝太郎さん!」


倉庫の奥から声がした。


龍魄を運んでいた商店組員の一人が、孝太郎の横を走り抜けていく。


その手には、龍魄の入った容器がいくつも抱えられていた。


「待て!」


孝太郎が追おうとする。


しかし、その前に黒崎が立ちはだかった。


「どこへ行く?」


「そこをどけ!」


孝太郎が殴りかかる。


黒崎はそれを受け止める。


「お前の相手は俺だ」


「……!」


その言葉で確信した。


黒崎は龍魄を奪うために、この場を作った。


自分をここへ連れてくることも。


高額な依頼を出したことも。


全部――。


「最初から俺を利用するつもりだったのか……!」


「そういうことだ」


黒崎は淡々と答える。


「気づくのが遅いぞ。おバカ」


クソ俺は龍術が使えないどうしたら。孝太郎は考えた。


「なぁお互い龍魄とお金をそれぞれ受け取って引くのはどうかな?」


孝太郎が提案した。


「別にお前の目的は果たされなくても良いんだよ。」


「あぁそうかい」


黒崎が拳を握る。


「でもまぁ何も知らずに殺されるのは可哀想だから一つ教えてやろう。依頼金は鼻から払う気は無かったよ」


黒崎がケラケラ笑った。


龍術が膨れ上がる。


孝太郎も構え直した。


「ふざけんな……」


頭に浮かぶのは、祀の顔。


治療費。


医師から聞いた言葉。


そして、今日受けた高額な依頼。


「俺は遊びでここに来たんじゃねぇんだ」


孝太郎の目が鋭くなる。


「親父を助けるために、金が必要なんだよ!」


黒崎の表情が、一瞬だけ止まった。


「……龍触症」


「……!」


孝太郎の顔が強張る。


なぜ――


黒崎がそのことを知っている?


「お前……」


黒崎は何も答えない。


ただ、静かに笑った。


「なるほど。そういうことか」


「なんで親父の病名を知ってる?」


孝太郎が問い詰める。


しかし黒崎は答えず、再び構えた。


「話は後だ」


「待て!」


「お前をここから帰すつもりはない」


黒崎が踏み込む。


孝太郎も迎え撃つ。


龍魄を奪われるわけにはいかない。


そして何より――


親父の病気を知っているこの男を、ここで逃がすわけにはいかなかった。

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