道中
――続き
車がゆっくりと停まった。
「到着しました」
運転手の声に、孝太郎が窓の外を見る。
目の前には、二階建ての大きな商店が建っていた。
表には看板が掲げられている。
龍魄商店
「ここまでですね」
「はい」
黒崎が先に車を降りる。
孝太郎も続いて外へ出た。
商店の周囲には数人の従業員がいる。
黒崎が店の中へ入ると、すぐに店員が駆け寄ってきた。
「黒崎様、お待ちしておりました」
「例の件は?」
「準備できています」
黒崎は頷いた。
孝太郎は二人のやり取りを見ていた。
「……」
何かがおかしい。
依頼書には、黒崎がここで取引をするとは書かれていなかった。
だが、店員の様子を見る限り、黒崎はこの店と以前から関わりがあるようだった。
「荒木さん」
黒崎が振り返る。
「こちらへ」
「はい」
これが終われば多額の報酬が貰えるそう思うとワクワクが止まらなかった。
孝太郎は黒崎の後を追う。
店の奥へ進む。
そして、従業員用の扉を抜けた先に、さらに広い倉庫があった。
そこには、いくつもの箱が積まれている。
「ここに龍魄が?」
孝太郎が尋ねる。
「ええ」
黒崎が答える。
店員が箱の一つを開けた。
中には、特殊な容器が並べられていた。
その中に入っているのは――
赤黒い液体。
「龍魄……」
孝太郎の目が止まる。
「これほどの量が……」
孝太郎が呟く。
黒崎はその様子を黙って見ていた。
そして――
「依頼はここまでです。後日お金を振り込んでおきますね。」
「はい」
静かに答える。
「今回は何事もなく大金が手に入ると思いましたか?」
孝太郎は黒崎を見る。
「どういう意味ですか?」
孝太郎が尋ねる
その声に、先ほどまでとは違う何かを感じた。
黒崎の様子が一変した。
「とりあえず殺すか」
孝太郎は身構える。
「……何を言ってる?」
黒崎はゆっくりと孝太郎へ視線を向けた。
「今回の依頼、あなた一人で来てくれて助かりました」
「……?」
「余計な人間がいれば、面倒でしたから」
黒崎の身体から、龍魄の気配が滲み出す。
孝太郎は拳を握った。
「最初から俺を殺すつもりだったのか?」
「ええ」
黒崎は淡々と答えた。
「あなたがここまで来てくれた時点で、もう依頼は終わりです」
「……ふざけんな」
孝太郎が一歩踏み込む。
だが、その瞬間――
黒崎の姿が消えた。
「ッ!」
直後、横から強烈な衝撃が飛んでくる。
孝太郎は腕で受け止め、そのまま後方へ吹き飛ばされた。
床を滑りながら体勢を立て直す。
「……龍術師か」
黒崎は答えない。
ただ静かに手を構える。
その背後では、店員たちが龍魄の入った容器を運び始めていた。
孝太郎はそれを見て、ようやく気づく。
――最初からこれが目的だったのか。
「龍魄を……奪うつもりか」
黒崎の口元が僅かに上がった。
「察しがいいですね」
「だったら――」
孝太郎も構える。
「俺を殺す前に、そいつら止めてみろよ」
黒崎の目が細くなる。
「……面白い」
次の瞬間。
二人の龍術が、正面からぶつかった。




