番外編6 リニューアルしたダンジョンは
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かくして、私たちはダンジョンに赴きました。
メンバーは、私、ヴィオ、ドガンさん、ガムルさん、フレルさんの五人です。
目指したのはダンジョンの森エリア。ここはよく狩りをしに通い詰めた場所なので、私たちはよく知っているはずの場所ですが、構造変化の影響か、見慣れぬ道ができています。
「たしかに、この地面の奥深くに水脈が流れておるぞ。しかしこんなに深いところを掘るのは現実的ではない。水脈が地表近くに来ておるのは……こっちじゃな」
ドガンさんは【構造解析】――対象に魔力を浸透させることで、建物や道具、あるいはダンジョンの構造を解析できるスキルを使い、みんなを先導します。
警戒しながら歩みを進めていきますと、澄んだ風が吹いてきました。外は冬だというのに、ここは心地よい温度です。そして、涼やかな空気に乗って、甘い香りが漂ってきます。
「おや、この匂いはブドウですね」
フレルさんが言います。ヴィオはそれを聞いて眼鏡を光らせます。
「ブドウ……。せっかく仕込んだワインは、あのクソドラゴンの熱波のせいでダメになってしまいました。ブドウがたくさん手に入れば、ワインを作りなおすことができます」
そうなのです。レッドエンシェントドラゴンの襲撃によって村にもたらされたダメージは甚大なものでした。
あのマグマの塊のようなドラゴンが撃退されるまでのほんの短い間で、ワインやエールのような発酵食品や、生ものなど、温度の変化に弱いものはみんな熱が通ってしまったのです。
勝利のお祝いムードの中で埋没してしまっていましたが、ヴィオはワインをとても楽しみにしていたので、たいへんがっかりしていました。
クロウリーさんを通じて他の土地のワインを買うこともできます。しかし、自分たちで作ったワインを飲むこととは、体験の質が違います。
たどり着いた先に広がっていたのは、緑だけでなく、赤や黄金にも彩られた秋の森でした。
道中から漂っていたブドウの香りだけではありません。熟れたイチジクの甘い香りが重なり、栗などの木の実や野趣あふれるアケビまで、たわわな実りを誇るように枝を彩っています。
森いっぱいに満ちた豊かな実りの香りに、思わず胸いっぱい息を吸い込みたくなりました。
「こいつは料理のしがいがありそうだぜ。見ろよ、あれはメイプルツリーだ」
ガムルさんが声を弾ませます。
「カエデじゃと!?」
ドガンさんまでもが、森を食い入るように見つめました。
私にはよくわかりませんが、お二人にとっては森そのものが宝石のように見えるようです。
「そんなにいいものなんですの?」
「ああ。あの木の樹液は蜂蜜のように甘くて、独特のいい香りがするんだ」
「材木としても価値が高いぞ。あの木は木質がよく締まっておってのう。柄の素材にすれば、頑丈で手になじむ道具が作れるに違いない」
温泉を探しに来たのですが、その前にすでにお宝を発見してしまうなんて。ダンジョンの構造変化は予想外のよい恵みをもたらしてくれているようです。
「本当ですね。あのどんぐりちゃんたち、『ボクを食べて』と言わんばかりに膨れ上がっていますよ!」
フレルさんだけ気持ち悪いのは相変わらずのようです。どんぐり、召し上がる気なんでしょうか?
「いえいえ。どんぐりそのままを食べるわけではありません。ですが、どんぐりを食べて育った動物の肉は格別なんですよ!」
フレルさんが答えます。どうやら思考が顔に出ていたようですね。私、淑女としてのマナーを忘れつつあるようです。村のワイルドな生活に慣れすぎてしまったのでしょうか?
フレルさんの視線の先を追いますと、赤毛のリスさんが、大きなしっぽを揺らしながら枝の上を歩いていました。つぶらな瞳に、小さな手には大きなどんぐり。その姿は、まるで絵本から抜け出してきたようです。
見惚れていると、リスさんはどんぐりを頭上へ掲げました。
「まぁ! わたくしにくださるのですか?」
小さな腕が勢いよく振り抜かれます。
「え──」
次の瞬間、ぐいっと襟首を引かれ、わたくしは落ち葉の上へ転がりました。
ドガァァァン!!
ついさっきまで私が立っていた場所で、どんぐりが轟音とともに爆ぜます。熱風が頬を叩き、落ち葉が舞い上がりました。
「ば、爆弾ですわぁー!!」
「お嬢様、あれは全然可愛くありません。次が来ます、戦闘準備を」
私は杖を構えて攻撃に備えます。
「爆弾リスか。珍しい魔物じゃねぇな。丸焼きにすると美味い」
ガムルさんには、すでにリスさんは食材に見えているようです。
「うらぁっ!」
ガムルさんは大きな斧をふるい、リスさんのいるどんぐりの木に打ちつけます。
ドゴォォォォン!!
バラバラバラッ!!!
大きな音とともに、どんぐりとリスさんが降ってきました。
地面に落ちたリスさんに、ヴィオがナイフを次々と投擲します。
私は魔法鞄にリスさんとどんぐりを収納しました。
「それ以上は帰りでいいじゃろう。まずは水脈じゃ」
ドガンさんが急かします。
私たちは本来の目的を達成するため、その場を離れます。




