番外編7 湯煙くすぶるバトルですわ
就職活動などで忙しくしてました……!
書けるペースで完結目指してがんばっていきます。
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ドガンさんの案内で私たちはさらに森の奥深くへと進んでいきます。
進んでいくと、なんだか腐った卵のような臭いが漂ってきました。
「臭いですわ……危険じゃありませんの?」
「温泉にはよくあることじゃ。このくらいならまだなんともないぞ」
このくらいならまだ!? ドガンさんがちょっと怖いことを言います。
「硫黄の臭いですね。錬金術の分野においては最も重要な素材の一つです。いざとなったら解毒ポーションを使いましょう。
本来は火山のあるところでよく採れるものなのですが。レッドエンシェントドラゴンの、強力な火属性の魔力で生成されたのでしょうか?」
フレルさんはなんだか嬉しそうです。比較的冷静なのは植物ではないからでしょうか?
「気体の毒は回りが早いです。念のため防護しましょう」
ヴィオが煙管に薬草を詰め、火をつけます。そして息を吐くと、煙管から煙の輪が生まれました。輪っかは私たちの頭にすっぽりハマって口元を覆います。清涼な植物の香りが腐ったような臭いを中和してくれているようです。
「そう嫌がるものじゃないぞ。そのうち温かで白い湯が湧いておるのを見ることができるぞ!
じゃがくぼみとか穴には落ちんように気をつけるんじゃぞ。毒が溜まっておることがある」
ドガンさんが私をガン見しながら警告します。
さ、さすがに私、命に関わるようなドジは踏みませんことよ! ……とは言い切れませんね。
私はヴィオに手を繋いでもらいながら、一歩一歩慎重に歩きます。
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徐々に強まる異臭に耐えながら、たどり着いた先は、ごろごろと大岩がたくさん転がった岩場でした。
視界を曇らせるこの湿気は湯けむりでしょうか? 我が領都スカンピア名物であるスチームサウナにも似た風情です。
その湯けむりの発生源は、滾々と湧き出る天然の温泉でした。
「おほーっ! 湯じゃ! 極上の湯じゃ!!」
ドガンさんが小躍りして大喜びです。
「これをスカンピアリゾートで提供すれば、どれだけの富を生むでしょう」
ヴィオが言います。
「みなさまに喜んでいただけるのは嬉しいことですね。でも、お金は十分ありますわ。これ以上稼ぐ必要はないのではなくて?」
「お金は力です。あればあるほど、お嬢様をろくでもない輩に嫁がせるリスクが下がります」
私の疑問にヴィオが答えます。
たしかに、アルフォンスさまのような不誠実な方とのご縁は、これ以上は遠慮したいものです。
しかし、喜びも束の間。
地面のくぼみにたっぷりと溜まったお湯の中、岩陰の向こうから、大きな影がのっそりと姿を現しました。
私たちは岩の陰に隠れ、息をひそめます。
岩の後ろからこっそりと覗き見たそれは身の丈三メートルもあろうかという巨大なクマでした。
その体表は黄色とも緑色ともつかぬ結晶に覆われており、甲羅のようになっています。
「モンスターじゃ! しかも強力な……あいつを倒さんことには湯を汲み上げることはできん」
私たちは臨戦態勢を取りました。
「クマは手のひらをじっくり煮込むと美味い」
ガムルさんは相変わらずです。
そのとき、私たちの足元に何かが降ってきて爆発しました。
「ここにも爆弾リスがいるようです」
ヴィオが岩場の周囲、崖の上を見やります。湯けむりでよく見えませんが、木陰のようなシルエットが見えます。
あそこに爆弾リスがいるのでしょう。
「小癪なリスめ。不用意に戦えば、湯に土が混じるぞ」
ドガンさんが舌打ちします。
「それ以前に、クマに私たちの存在が気取られてしまいます」
ヴィオがクマの様子をうかがいながら言います。クマはまだ警戒していないようです。
きっと、爆弾リスが野生動物に爆弾を投げることは、ここでは日常茶飯事なのでしょう。
「湯は僕が守ります。水天蓋」
フレルさんが魔法で、お湯が湧いている泉に水の膜を張ります。
リスはどんぐりを落とし続けていますが、水の膜に阻まれて、泉の中や地面には落ちなくなりました。
幾分か爆発音も控えめになっています。まるで、遠くで鳴っているかのよう。
「この魔法は弱い攻撃を防ぎますが、殺傷能力はありません。クマとリスを倒すのはみなさんにおまかせします」
「わかりました。リスは私が対処します」
ヴィオがナイフを数本投擲します。
遠くで、キィキィという甲高い鳴き声が上がります。
私には見えませんが、きっと当たっているのでしょう。
「リスはヴィオにお願いしますわ。私たちは、今のうちに……」
私はドガンさんとガムルさんに目くばせします。
「嬢ちゃんのバカ火力で攻撃したら温泉ごと吹き飛ぶ! まずはクマを引っ張り出すぞ」
「わかりましたわ。ですが、どうやって?」
クマをいかにして引っ張り出すか私が悩んでいる隙に、ガムルさんは何も言わず何かを投げました。
それは放物線を描いて飛んでいき、湯に使ってまったりとしていたクマの頭に着弾します。
「ガァァァァァッ!!」
途端、クマが大絶叫を上げました。
「あれは何ですの?」
「フレルが作った催涙ポーションだ。肉にかけるとピリッとして美味ぇからよぉ。持ち歩いてたんだ」
「クソトカゲ!! 湯に異物が混じったではないか!」
「ちょっとくらいなんだ。薄まるからどうってことないだろ」
ドガンさんとガムルさんが言い合っている間、温泉では涙目になったクマが暴れています。
そのうち湯でポーションが流されたのでしょう。怒りの形相で私たちを睨みつけています。
そして一直線に向かってきたではありませんか!
「目的は達成したな」
クマの爪をガムルさんが斧で受けながら言います。




