番外編5 さらなる発展を目指して
夕食のメニューを一通り味わったあと、私は皆さまに切り出しました。
「それでは、今後の村の運営についてですが」
「なんだ? 婚活じゃねェのか?」
ガムルさんが唐突に「婚活」などとおっしゃったので、私はびっくりしました。
「ガムル殿……!」
ソレンさんがたしなめます。
もしかして、私たちが女湯で話していたとき、男湯に皆さまがおいでだったのでしょうか?
「僕にですねぇ新しいお薬のアイディアがあるんですよ!
一ヶ月ほど続けて服用することで、森の民の繁殖期を誘発するというものでして、生物学的男性用と女性用をそれぞれですね……」
やっぱり皆さま、私たちの会話を聞いておられたようですね。少し気まずいです。
フレルさんは「繁殖期」などと、生々しい言葉を使わないでいただきたいですわ!
彼の場合、自分を婚約者候補として売り込んでいるのか、ただただ新薬のアイディアを思いついて興奮しているのかわかりませんわね。あのやたらギラギラした目からして、たぶん後者でしょう。
「婚活はとりあえず置いておきましょう。私が相談したいのは、スカンピアの冬の事業についてですわ」
スカンピアリゾートは避暑地として人気でしたが、それは同時に冬は観光客が少ないというこちです。
今年は復旧作業があったからそれでも好都合だったのですが、来年も農閑期に観光産業もオフシーズンという状況は大変もったいないです。
このままでは、冬の間、私の頭だけでなく、皆さまの筋肉まで鈍ってしまいますわ。
「確かに、冬は比較的することが少ないですのぅ」
ガヴさんは、近ごろは村をのんびり散歩……ではなく、がっつり腿上げで走り込みをされている姿をお見かけします
「製塩もやっておりますし、春から秋はしっかり働いて、冬は休んでもいいとは思いますが」
「貯金ができるタイプの人はそれでもいいですが、収入にムラがあると、計算の苦手な人は生活しにくいということはありますよ」
しっかり者のヴィオは冬くらい休んでも生活していけそうですが、フレルさんのおっしゃるように、収入があるだけ使うタイプの人は、常になにか仕事があったほうがいいでしょう。
急な出費が必要なときもありますものね。
「嬢ちゃん、心配いらん。ダンジョンの深層には地脈の熱が溜まっとる場所がある。そこから引き込めば、最高の温泉ができるぞ!」
「スカンピアに、温泉が湧きますの!?」
私は思わず身を乗り出します。
温泉! なんと甘美な響きでしょうか!
「温泉は卵をゆでるとうまい」
「いいですねぇ~! いろんな効能のある薬湯はいかがですか? ネタはいくらでもありますよ」
ガムルさんとフレルさんも乗り気なようです。
ドガンさんはふふんと鼻を鳴らし、計画を語ります。
「この間の魔素活性化の影響で、ダンジョンの構造変化が起きたことがわかったんじゃ。
第一層と第二層の中間あたりの深さに地下水脈ができておる。この水脈を掘ってポンプで水を汲み上げてやれば、村の表側に浴場施設を建築することが可能じゃ」
「水脈があるのは違いねェだろうが、温度がちょうどいいかはわかっているのか?」
「それはそうじゃが、炊くなり冷ますなりすればいいじゃろ」
「それに浴場ならすでに蒸し風呂と潮湯のものがあります。新しく温泉を掘る必要があるのですか?
二つあっても、入浴は日に一度にしておかないとのぼせますし、湯上がりのケアが大変ですよ」
「ヴィオ、お前ほどの者がわかっておらんとは。
入浴は日に一度か、時間をおいて多くても朝晩二度ということは当然じゃ。
つまり……浴場が二つあるということは、客は両方の湯に入るために連泊するということじゃ! つまり、客単価が上がる!」
「そう言われると……一理ありますね。
潮湯はいいものですが、真水のお風呂にも入りたいときもあります」
「温度に泉質、調べることはたくさんありますね。ひとまず調査をしてみましょう」




