番外編2 婚活は現実ですわ
貴族の婚姻は、恋愛感情だけでは成立しないのが世知辛いところです。
ともに家を守り立て、領地を経営し領民の生活を背負っていかなければなりません。
血筋を絶やさぬために跡継ぎを生むことも必要。
年回り、家格や身分の釣りあい、所属する派閥など、考えなければいけないポイントはたくさんあります。たとえ本人同士の相性が悪くとも、自我を抑えて妥協することも大事なのです。
私がユニークスキル【聖女の卵】に目覚めて、教会からも聖女認定されたことで、釣りあう家格の男性となると、大変選択肢が絞られてしまっていました。
「この際身分はどこぞの高位貴族の養子になっていただき、なんとかすればいいのです。
そうなると問題は本人の資質のみに絞れます」
ヴィオが言うことは乱暴ですが、確かにと思うところがあります。
「まずフレルさんはまず除外するとして」
「ですわね」
「なぜじゃ? 人間族的にはあやつは美形じゃろう?」
私とヴィオの会話に、ドガンさんが疑問を差し挟みました。
これには、貴族ならではの事情と、異種族婚の難しさがあるのです。
森の民族の血筋は、生まれる子に類まれな美貌と豊富な魔力量をもたらします。王国貴族にとってこれは大変魅力的です。
しかし森の民族の恋の季節は、数年に一度。人によっては十年に一度という場合もあります。
森の民族の恋の季節を待っている間に、パートナーである、人間族を始めとする短命種族のほうが、子供を作れないほどに老いてしまうということがよくあるのです。
ですので、通常貴族同士の婚姻で踏まれるべき「数年の婚約期間を経て、しかるべきタイミングで結婚し、そのあと跡継ぎを生む」という手順があまり合理的ではなくなってしまいます。
そのような事情から、王国貴族が「婚約者候補として」森の民族を選ぶことはまずありません。
結婚する場合のほぼ全てが恋愛結婚です。
つまり、自由恋愛の結果、子供を授かったから責任を取って……というパターンがほとんどとなります。むしろ、王国貴族の中では、「自由恋愛はいただけないが、相手が森の民なら仕方ない」と許される風潮があります。
そして、一般的に森の民族との混血児は重宝され、「精霊の祝福」として喜ばれます。
「……しかしながら、いざ子が生まれてみたら、耳が尖っていなくて修羅場ということもあるようですが」
ヴィオの言ったことの意味が、私にはわかりませんでした。
「? 耳は他種族の親のほうに似たということですの?」
「あー……、他人の種を森の民族の男のせいにしたということじゃろ」
「婚前交渉に抵抗のない令嬢である時点で、素行はお察しということですから」
「なるほどのう」
ドガンさんはどういうことかわかったようで、ヴィオと頷きあっています。
ヴィオは逸れた話題を戻します。
「スカンピアの中では、ソレンさんが一番の優良物件でしょう」
ソレンさん。
元・王都の騎士で、この村では唯一と言っていいほど常識的な方です。
「素朴で質素なお人柄が素敵ですわよね。騎士ということは準貴族でしょうから、身分としては許容範囲でしょうか」
「性格がよいのは認めるが、わしはあんな細っこいのは頼りなく感じるのぅ。村長くらいのたくましさがないとわしは物足りんぞ」
ソレンさんは騎士らしい、無駄な肉のない筋肉質な体格で、そこまで痩せておられないと思います。村長のガヴさんが素敵なおじいさまであることは同意できるところです。既婚者でいらっしゃいますが……、それよりも。




