番外編1 スカンピアの冬
番外編です。マイペースに投稿していきたいと思います。
いまのところ土日の19時20分に予約投稿しています。
●
古竜の襲来から数ヶ月が経ちました。
オルダー領はすっかり雪景色です。
スカンピア村は農閑期という事情もあり労働力が浮いているため、復旧は順調に進んでいます。
そればかりではなく、一部の施設は前よりもよくなっていました。
「ふぅ……極楽ですわ。ドガンさん、素敵な湯船をありがとうございます」
「かっかっか! わしの乙女の感性がこの曲線を生んだんじゃ。どうじゃ、いい尻当たりじゃろう?」
私とヴィオとドガンさんは、リニューアルされた公衆浴場でまったりしていました。
水棲モンスターの襲来によって、村の崖の地形が変わりました。
ダンジョンから貫通した穴や、モンスターが登るためにえぐったくぼみを利用して、足場を作り、自動で海水を汲み上げるための揚水ポンプを設置する工事ができるようになったのです。
海中に魔導エンジンがついたポンプを沈め、太い鉄のパイプをところどころ固定しながら村まで伸ばしています。
これにより、村の製塩作業が劇的に楽になった上に、これまで十日に一度だった「潮湯」に毎日入れるようになったのです!
それにともない、新しい浴槽が作られ、蒸し風呂施設が大幅パワーアップしてリニューアルされたのです。
今まで時間交代で男女を切り替えていましたが、新しい浴場は、男女別になっています。
設置したドガンさん曰く、ポンプのメンテナンスがちょっと大変らしいですが、お風呂が好きなドガンさん自身がこの潮湯を一番喜んでいます。
「……お嬢様。こうしてお風呂に入っていると、あの王都での婚約破棄が嘘のようですね」
「ええ。物語では、今ごろ隣国の皇太子さまあたりが『君をずっと探していた』なんて現れるころでしょうけれど……現実は、ドラゴンが地面から湧いてきましたわ」
「……現実のほうがまだ食い出があるぶん、マシかもしれません」
「ガムルさんのドラゴン料理はおいしかったですものね」
私とヴィオはしみじみとこれまでのことを思い出します。
婚約破棄の悪夢から始まった、借金返済に奔走する日々……。
結局お金は返ってきましたし、それに加えて婚約破棄の慰謝料もいただいたのですが、私は呆けたといいますか、燃え尽きたと言いますか。
村の運営で忙しくしつつも、どこかぼんやりとしながら過ごしておりました。
「だいたい、物語の定番の展開では、ハイスペ男性と結ばれたあとに聖女であったことがわかり、『いまさら戻れと言われてももう遅い』でしょう。
お嬢様の場合、すでに聖女になっておられますから、国外に出してもらえるとは思えません」
ヴィオは若干怒りを込めて言いました。
国王が婚約破棄を認めたことで、晴れてフリーとなった私のもとには、ドシドシと釣り書きが送られてきているのです。
しかしながら、呆けている私はどの殿方に会う気にもなれず、保留に保留を重ねて、釣り書きの山を築いているのです。
「では国内で婚活するしかないのかしら?」
「あの釣り書きの中に、お嬢様にふさわしい方がおられるとは、私には思えません」
ヴィオの不機嫌の理由はそれです。
私以上に、ヴィオが私の再婚約に消極的なのです。
年回りの近い男性はほぼ売り切れ、残っているのは「お察し」物件ばかり。
「でも、身近なスカンピアには変態か筋肉しかいませんし……」
ヴィオのつぶやきに私は面くらいました。
この村で婚活という発想は、私にはありませんでした。ヴィオは、すごいことを考えますわね?!




