日常編35 呼び出された理由は
私は、エフェリアお姉様とともにアドルグお兄様の部屋の前までやって来ていた。
ここで現在、オルディアお兄様との間で話し合いが行われているはずだ。それを私達は、盗み聞きするつもりである。
「エフェリアお姉様、やっぱりやめておいた方がいいんじゃないですか?」
「大丈夫だよ。流石にアドルグお兄様も、戸の前に人がいるなんてわかる訳ないし。オルディアも、多分無理だと思うよー?」
「いや、得意気な顔をしないでくださいよ……」
エフェリアお姉様は、とてもテンションが高かった。これも一種の悪戯、ということで気持ちが昂っているのだろう。
ただ、盗み聞きというものは当然良いことではない。やはりやめておいた方が良いのではないかろうか。本当にばれないかというのも、怪しい所であるし。
「でもさ、クラリアだって気になったからここに来たんでしょう?」
「それは……そうですが」
エフェリアお姉様の言葉に、私はゆっくりと頷く。
正直な所、二人が何を話しているのかは気になる。オルディアお兄様について、何かあったのだろうか。
例えば、婚約が決まったとか。いや、そういう話ならお兄様ではなくお父様に呼び出されることになる。そもそも秘密にしておくべきような、ことでもない。
「まあ、案外下らないことかもしれないよ? アドルグお兄様は、偶にすごくどうでもいいことで呼び出したりするし」
「そうなんですか?」
「私がね? ある令嬢と少し言い合いになっただけで、呼び出されたことあるもん。別にさ、お互いに尾を引くようなことでもなかったんだけど……」
「ああ……」
アドルグお兄様は、私達のことを深く愛している。その愛は、時に暴走することもあるものだ。
オルディアお兄様も、そういったことで呼び出されたのだろうか。それなら、大変かもしれない。アドルグお兄様を説得するという面において。
「まあ、あの時はよく言い聞かせた訳だけれど、オルディアも同じことしているんじゃないかな?」
「その可能性は、ありますね」
「結局さー、聞いてみなければわからないことって、あると思うんだよね? さて、それじゃあ失礼しちゃおうかなー」
「うん?」
「……え?」
エフェリアお姉様が戸に耳をつけようとした瞬間、その戸が開いた。
オルディアお兄様が、中から出てきたのだ。二人の目が合い、エフェリアお姉様は気まずそうに視線をそらす。それに、オルディアお兄様は苦笑いを浮かべた。
どうやらお兄様には、すぐにわかったようだ。エフェリアお姉様が、盗み聞きをしに来たということが。




