日常編33 比べてみれば
「もう一つ、食べてもいいですか?」
「え? あ、うん。それは別にいいけど……」
私は、エフェリアお姉様が作ったクッキーを口に運び入れる。
やはりこれは、おいしいと思う。上手くできているのではなかろうか。
「エフェリアお姉様は、心配性なのですね? これ程まで上手くできているのに」
「そ、そうかな? あ、いや、クラリアはイフェネアお姉様が作ったものを食べてないから、そう言えるんだと思うよ?」
「イフェネアお姉様が作ったのは、こちらですか……」
私の賞賛の言葉に納得しかけたエフェリアお姉様だったが、イフェネアお姉様が作った方の皿をこちらに差し出してきた。
食べて比べてみれば、違いがわかるということだろうか。しかしそれにしたって、エフェリアお姉様のクッキーの出来栄えは充分だったと思うのだが。
「それじゃあ、いただきますね?」
「うん、食べてみてよ」
「あ、おいしいですね。確かに何か、違うような気もしますけれど……」
「ね? そうでしょ?」
イフェネアお姉様のクッキーを口に入れた瞬間、私は驚くことになった。
その食感も味わいも、確かにエフェリアお姉様のものとは違う。ただ、別にどちらが優っているとか劣っているとか、そういう感想は思い浮かんでこない。
「イフェネアお姉様のクッキーは確かにおいしいですけれど、エフェリアお姉様のものが劣っているとは思いませんよ? 違うもののように思います」
「そうかな? でも、やっぱりイフェネアお姉様の方が上手く作れているし……」
「まあ、高級感とでも言えるでしょうか。そういう感じではありますね」
イフェネアお姉様のクッキーというものは、なんというか少し高いものみたいな感じだ。
エフェリアお姉様の方が、一般的な味わいといえるだろうか。しかし私としては、甲乙つけがたいものであるように思える。
「でも、エフェリアお姉様のクッキーの方が、私にとっては馴染みがありますね」
「そ、そうなの? えっと、安いものってことだよね?」
「わ、悪い意味で言っている訳じゃないですよ? その、私はイフェネアお姉様が作れるような高級なクッキーというものは、ここに来るまであまり食べてこなかったので……」
「あ、そっか……」
エフェリアお姉様は、私の言葉に目を丸めていた。
私が平民として暮らしてきたことを、思い出したということだろう。エフェリアお姉様は、少し気まずそうというか、ばつが悪いような表情をしていた。
「エフェリアお姉様、そんな顔をしないでください。私はただ、エフェリアお姉様のクッキーがおいしいということを言いたかっただけなので……」
「そうだよね。でも、ごめんね。なんというか、私嫌な貴族だったよね。平民の人達が食べているようなものを、馬鹿にしたい訳じゃなかったんだけどなぁ」
エフェリアお姉様は、安いものと言ったことを後悔しているようだ。
それは事実であるのだけれど、受け取り方によっては、確かに馬鹿にしているようにも思えることだろう。別に、そのような意図はエフェリアお姉様にはなかったと思うけれど。
でも、それをすぐに理解して、反省できるのはお姉様が立派な貴族だからではないだろうか。少なくとも私は、エフェリアお姉様のことを高慢な貴族だとは思わない。




