日常編32 充分な出来栄え
「エフェリアお姉様、私はエフェリアお姉様のお気遣いが嬉しいです。だから、そのクッキーを食べさせてもらえませんか?」
「だ、駄目、これは私が食べるんだから。クラリアには、もっと上手くなってから食べて欲しいもん」
エフェリアお姉様は、私の提案に首を振った。
やはり、食べさせてくれるつもりはないらしい。そこまで出来栄えが悪いという訳ではないというのに。
「エフェリアお姉様、充分な出来栄えだと思いますけど。むしろ、初心者でこれだけ作ることができたなら、すごいんじゃないですか?」
「え? そうかな?」
「特に焦げているような訳でもないですし、焼けていない訳でもありません。形が歪と言っても、そこまでではありませんし、見た目はおいしそうに思えますが」
「ま、まあ、そうかもしれないね?」
私が褒めてみると、エフェリアお姉様は少し調子づいていた。
不安だったということなのだろうか。もう少し押せば、エフェリアお姉様のクッキーを食べられるような気がする。
「あ、でもね? 味はわからないんだ。もちろん、ちゃんと計ったつもりではあるけど。でもこういうのって、分量が大切だろうし、それについてはあまり自信はないかも……」
「でも、この焼き上がりなら大丈夫なんじゃないですか? ああ、お砂糖とお塩を間違えたとか、あり得るものでしょうか?」
「え? あー、それは多分大丈夫だと思うよ? ちゃんと味見はしたけど、甘かったと思う」
「それなら、特に問題はないのではありませんか?」
エフェリアお姉様は、既に味見を終えているようだった。
それで味に問題がなかったというならば、私が食べても問題はないのではなかろうか。エフェリアお姉様が、何を懸念しているのか少しわからなくなってくる。
「でもね、イフェネアお姉様のクッキーよりは、おいしくないと思うんだ」
「それは、食べ比べた結論ということでしょうか?」
「まあ、そうかな? でも正直、味とかはあんまりわからなかったかも。甘かったとは思うけど、どんな味なのかと言われると……」
「……わからなくなってしまった訳なんですね?」
エフェリアお姉様は、悩んでいるような仕草を見せた。
恐らく、私に食べてもらうということに緊張して、お姉様はクッキーを味わう所ではなかったのだろう。味覚が麻痺していたのかもしれない。
「イフェネアお姉様は、なんと仰っていたんですか?」
「イフェネアお姉様はね、おいしいって言ってくれたんだけど、それはお世辞かもしれないし……」
「そんなことはないと思いますよ? まあ、とりあえず……」
「あっ……」
私は、エフェリアお姉様が油断している隙にクッキーを一つ口に運んだ。
エフェリアお姉様はそれを見て目を丸めて固まっていた。完全に油断していたのだろう。簡単にクッキーを取ることができた。
という訳で、私はエフェリアお姉様のクッキーを味わってみる。実際の所、味はどうなのか。その答えはすぐに出た。
「おいしいですよ、エフェリアお姉様」
「ほ、本当?」
「ええ、お世辞ではありません。本当においしいと思います」
エフェリアお姉様が作ったクッキーは、おいしかった。
味についても、何も問題はないといえるだろう。エフェリアお姉様は、クッキー作りを無事に成功させていたのだ。




