日常編26 易しい本
書庫の整理が終わった私は、ウェリダンお兄様の部屋にお邪魔させてもらっていた。
そこには、大きな本棚がある。難しそうな本がいくつも並んでいるのだが、その中に私がわかるようなものがあるのだろうか。
「クラリア、そっちに目的の本はありませんよ?」
「え? そうなんですか?」
「ええ、そちらは今の僕が使っているものですから。昔の僕が使っていたものの方が、今のクラリアにはいいでしょう」
「なるほど、そういうことでしたか……」
ウェリダンお兄様は、机の下の方から大きな箱を取り出した。
蓋が開くと、そこには多くの本が入っていた。それは今まで、ウェリダンお兄様が使っていたものということだろう。
「すごいですね、こんなにも多くの本があるなんて……これが、ウェリダンお兄様が学んできた証という訳ですか」
「そうですね。まあ、僕は元々学ぶのが好きでしたから」
「今まで使っていた本は、全部残してあるんですか?」
「まあ、凡そはそうですね。何か役に立つことがあるかとも思っていましたから。エフェリアとオルディアは、クラリアのようなことは言ってくれませんでしたが……」
ウェリダンお兄様は、苦笑いを浮かべていた。
エフェリアお姉様とオルディアお兄様は、確かに歴史を学ぼうとはあまり思わないかもしれない。それがウェリダンお兄様としては、残念だったのだろうか。
「そうですね……歴史を学ぶなら、最初はこれでしょうね」
「これは……易しい歴史?」
ウェリダンお兄様が私に渡してきたのは、易しい歴史というタイトルの本だった。
本当に見るからに、易しそうな本である。何やら可愛らしい絵が、表紙には書いてある。
中身を少し見てみると、明らかに文字が少なかった。要点だけ、まとめられているということだろうか。これなら確かに、私でも読むことができそうだ。
「本当にわかりやすそうですね?」
「ええ、僕がクラリアよりも小さな時でも読めたものですからね。ただ、少し古い本ですから、その点において少し心配な部分はあります。少しいいですか?」
「あ、はい……」
「ああ、やっぱりここは間違っていますね。当時はこう考えられていましたが……一度、目を通しておいた方がいいですね。間違っている部分は、訂正します」
「すみません、お手数をおかけしてしまって……」
「いいえ、構いませんよ。これも楽しいものですからね」
ウェリダンお兄様は、本当に楽しそうに笑っていた。
そういう表情を見ていると、益々学ぼうと思って良かったと思える。ウェリダンお兄様の喜ぶ顔が見られたのは、嬉しい誤算だ。




