日常編25 学べること
私はウェリダンお兄様の指示に従って、書庫にある書物を動かしていた。
ウェルード公爵家の書庫は、とても広い。やはり公爵家というだけあって、かなりの量の文献があるようだ。
「ウェリダンお兄様、これはこっちでいいんですか?」
「ええ、そうですね。そちらに並べておいてください」
「……ホルハインビッツの戦い?」
私は自分の手元にある書物に、少しだけ目を通してみた。
そこには、ホルハインビッツの戦いと記されている。これはどうやら、大昔にあった戦いに関する資料のようだ。
「クラリア、どうかしましたか?」
「ああいえ、この書物には戦いの記録が残されているのですね?」
「ああ、それですか。クラリアは知りませんか? ホルハインビッツの戦いは、今から三百年前にあった戦いです」
「まったく知りません」
ウェリダンお兄様の言葉に、私は首を横に振る。
その戦いの名前は、聞いたこともない。有名なものなら、流石に私でも耳にしたことはあると思うのだが。
「まあ、そうでしょうね。かなりマニアックなものですから。とはいえ、実に興味深いものではあるのですよ? だからこそ、資料として書庫に置いているという側面もあります」
「この資料から、何か学びがあるものなのでしょうか?」
「ええ、もちろんです。過去の事象から学べることは、多いものですよ。とはいえ、その資料はクラリアに必要なものではありませんがね」
「まあ、戦いなんて縁はないでしょうしね……」
私はウェリダンお兄様の言葉に従い、書物を本棚に収めた。
歴史というものに興味がないという訳ではないが、これはそもそも難しそうだ。もう少し簡単な本でなければ、頭に入って来なさそうである。
「ウェリダンお兄様、ここにある書物は難しいものばかりですね? もう少し簡単なものはありませんか?」
「おや、それはどういう意味でしょうか?」
「私も、もう少し色々と学びを広げていくのもいいのかもしれないと思いまして。例えば、歴史についてなどですが……でも、ここにあるものは、難しいものばかりでしょう?」
「なるほど、それは良い志ですね。そういうことなら、僕の部屋に後で来てください。丁度良い本がありますから」
ウェリダンお兄様は、私の言葉に笑顔を浮かべていた。
そういうことなら、後で部屋にお邪魔させてもらおうか。ウェリダンお兄様がお薦めする本なら、きっとわかりやすいものだろうし。
でも、お兄様が使っているようなものは結局難しいものであるような気がする。いや、その辺りについても考慮して、易しいものを渡してくれるだろうか。




