日常編24 書庫の整理
ウェルード公爵家の屋敷には、書庫がある。そこには、色々な書物が保管されているそうだ。
そこに私は、足を踏み入れていた。ウェリダンお兄様が書物の整理をするということで、それを手伝うことにしたのだ。
「いや、申し訳ありませんね? 結果として、突き合わせることになってしまって……」
「いえ、お気になさらないでください。そもそも、この量の書物の整理は、一人では大変なものでしょうし……」
「まあ、大変と言えば大変ですね。しかし、ここを利用するのは、主に僕ですからね。僕がやらなければならないことです」
この書庫は、主にウェリダンお兄様が使うらしい。色々と調べ物がある時には、利用するようだ。
その調べ物とは、一体どのようなものなのだろうか。それは少し、気になる所ではある。
ただウェリダンお兄様は、そのことについては教えてくれなかった。何やら、私には言えないことであるようだ。
「まあ、今回はクラリアが手伝ってくれますからね。いつもよりは手間もかからないでしょう」
「……率直な疑問なのですが、メイドさんなどに手伝ってもらわないんですか?」
「使用人の方々は、普段から忙しくされていますからね。このようなことに手を煩わせるのは、偲びありません。そもそも、大変とはいえ、時間をかければできることですからね。そういったことは、自分でやると決めています」
ウェリダンお兄様は、私の疑問に答えてくれた。
そういう所は、流石だといえる。やっぱりウェリダンお兄様は、すごい貴族だ。
「クラリア? どうしかしたのですか?」
「いえ、ウェリダンお兄様は立派な貴族なのだなと思っていたのです」
「そこまで褒められるようなことではありませんよ。こういったことは当たり前のことです。とはいえ、当たり前のことをできることが美徳という時もあるかもしれませんが……」
私からの賞賛に、ウェリダンお兄様はあまり喜んでいないように見えた。
もしかしたら、当たり前のことができない貴族のことを思い浮かべているのかもしれない。
そこで私は、ある人のことを思い出すことになった。もしかしたらウェリダンお兄様も、同じ人のことを思い出したのかもしれない。
「ウェリダンお兄様、お父様のことですが……」
「まあ、父上のことをとやかく言うのはやめましょう。そのことについては、もう終わったことですから。もちろん、見習うべき点という訳ではありませんがね」
ウェリダンお兄様は、ゆっくりと首を横に振った。
やっぱり、浮気したお父様のことを考えていたようだ。身近に当たり前ではない人がいたから、真っ先に思い浮かべてしまったということだろう。
「ともあれ、書庫の整理を始めましょうかね。クラリア、あちらの本棚にある本を持って来てもらえますか?」
「あ、はい。わかりました」
ウェリダンお兄様は、話を変えるためか書庫の整理を始めることにしたようだ。
私は、その指示に従う。何はともあれ、ウェリダンお兄様のお手伝いを頑張るとしよう。




