日常編22 家事の腕前
イフェネアお姉様の家事の腕前というものは、予想以上のものだった。
私などとは比べ物にならない手際だ。例えば、私なら十分かかる家事でも、イフェネアお姉様は五分程度で終わらせられる。
「すごいですね、イフェネアお姉様は……正直、驚いています。ここまで手際がいいなんて」
「そうかしらね? これが普通ではないのかしら?」
「いえ、私ならもう少し時間がかかると思います……あ、そっか」
「クラリア?」
そこで私は、とても大切なことを思い出していた。
イフェネアお姉様が家事を習う相手、それがどういった人達であるのかということを。
このウェルード公爵家の使用人の方々は、一流である。そんな人達から家事を習った場合、すごい腕前になるのは当然なのかもしれない。
「ああでも、私も一応、お母さんから習っているんだっけ……」
「クラリア、どうかしたのかしら?」
一度納得しかけた私だったが、今度は自分の立場というものを思い出すことになった。
お母さんは、一流のメイドである。このウェルード公爵家でも働いていた。
そんな人から家事を習ったというのに、私はイフェネアお姉様程ではない。つまりこれは、才能の差という訳か。
「イフェネアお姉様はすごいです。私などとは比べ物にならないくらい、家事の才能があるんですね?」
「あら? どうしてそうなるのかしら? 別にクラリアが卑屈になることなんてないと思うけれど……」
「いえ、私もお母さんから、そのウェルード公爵家のメイドだった人から習ったというのに、イフェネアお姉様程手際良くはできませんから」
「それは……まあ、私の方が随分と年が上だもの。当然のことではないかしら?」
イフェネアお姉様の言葉に、私は考える。これは本当に、年の差によるものなのだろうか。
なんというか、それは少し違うような気がする。イフェネアお姉様と私では、明らかに色々と違う。
「そういうことでは、ないように思えます。イフェネアお姉様と私では、やり方も違います」
「それなら……貴族と平民の違い、ということなのかもしれないわね。生活する上での手際と、使用人としての手際は違うものだと思うし、クラリアのお母様も平民としての家事のやり方を教えたのではないかしら? 私が習ったのは後者なのだろうし……」
「そうでしょうかね?」
イフェネアお姉様の指摘に、私は首を傾げることになった。
それはなんというか、私を励ますための言葉のように思えたからだ。
しかし、どうしたものだろうか。イフェネアお姉様の手際の良さというものは、あまり平民から親近感が湧くようなものではないような気もする。
もちろん話が通ずる部分もあると思うけれど、私が予想していたものとは、少し違うかもしれない。




