日常編21 趣味としての家事
イフェネアお姉様は、家事全般にも精通しているらしい。
貴族であるお姉様は、本来ならばそのようなことをする必要はない。それなのに、そういったことを学んでいるのはどうしてなのだろうか。
「まあ、覚えておいて損があることではないもの。とはいえ、私は必要以上に学んでいる訳だから、これはもう趣味の領域なのかもしれないわね」
キッチンに立つイフェネアお姉様は、私の疑問に対してそのように答えてくれた。
趣味として、家事を学ぶ。それは貴族としては、非常に珍しいことなのかもしれない。
ただ、私としては少し嬉しい気持ちもあった。そういったことについては、私も知らない訳ではないからだ。
「家事なら、私も少しは自信がありますよ? ここに来るまでは、やっていましたから」
「そうよね……クラリアのように、日常的にそれを必要としてやっていた人の前で、趣味などというのは失礼だったかしら?」
「ああいえ、そんなことはありませんが……」
私の言葉に、イフェネアお姉様は少し勘違いしてしまったようだ。
別に私は、お姉様が趣味と言ったことを咎めようなんて思ってはいない。ただその言葉を受けて、私は少し考える。実際の所、そうなのかもしれないと。
「確かに、そういったことを気にする人はいるかもしれませんね?」
「やっぱり、そういうものかしら?」
「平民の中には、貴族の方々に反感を持っている方々もいますからね……」
イフェネアお姉様のように、家事を趣味としていると言うのは、平民に対してはよくないものなのかもしれない。
ただそれは、言葉の綾のようなものだ。イフェネアお姉様がそういったことを学ぶ姿勢を評価する人も多いと思う。
実際に私も、イフェネアお姉様と話が合うかもしれないと期待した側面がある。これはむしろ、貴族としては武器になるのではなかろうか。
「クラリア? どうかしたの?」
「いえ、イフェネアお姉様は実際の所、どのくらい家事ができるのかと思いまして……」
「どのくらい、と言われると少し困ってしまうわね。それなりにできるつもりではあるけれど」
「実際に、見せてもらっても構いませんか?」
「ええ、それはいいけれど……」
私はとりあえず、イフェネアお姉様がどのくらい家事ができるのかを探ってみることにした。
それがわかれば、これからのイフェネアお姉様の貴族としての振る舞いに、何か活かせるものがあるかもしれないからだ。
平民と話が合う部分がある。これは強みになるはずだ。そのためにもまずは、イフェネアお姉様の家事の腕を知ることにしよう。




