日常編8 お兄様方からのプレゼント
誕生日という日は、特別な日だ。それは私も、よく知っている。
これまでの誕生日だって、お母さんや村の皆に祝ってもらっていた。その日はなんだか、自分が主役のようで、それにプレゼントももらえて楽しい日だと思っていたのだ。
ただヴェルード公爵家の一員となってから迎える初めての誕生日というものに、私は少し困惑していた。それがあまりにも、盛大なものだったからだ。
「クラリア、これは僕からの誕生日プレゼントです」
「これは……双眼鏡ですか? ありがとうございます」
「ええ、これで色々な所を見渡してみてください。きっと、発見がありますよ」
「クラリア、これは私からのプレゼント」
「ありがとうございます。これは服ですか?」
「ええ、クラリアに似合うと思って……」
ウェリダンお兄様とイフェネアお姉様から、私はプレゼントを受け取った。
それらは、とても嬉しいものであった。しかしどちらも結構高そうなものなので、少々申し訳ない気持ちもある。
でもこれは、二人が私のために選んでくれたものだ。それは二人に感謝して、受け取っても良いものなのだろう。
「クラリア、これは俺からのプレゼントだ」
「これは……羽ペン、ですか? ありがとうございます」
「そのペンは使いやすいものだ。軽く丈夫で書きやすい。俺が愛用しているものと遜色はない、というよりもサイズ以外は同じものだ」
「そうなんですね……」
アドルグお兄様のプレゼントは、羽ペンであった。
これもまた、結構高そうなものだ。アドルグお兄様が愛用しているものと同じならば、ほぼ確実にそうなのだろう。とはいえ、それはもう気にしないことにする。
とりあえず私は、試しに羽ペンを持ってみる。確かに軽い。これなら何か書き続けても、手が疲れなさそうだ。
「……良かった。皆まともなプレゼントを渡しているみたい。やっぱり釘を刺しておいて良かったね、オルディア」
「そうだね。特にアドルグお兄様は止めておいて良かった。よもや島を買い取る所だった訳だし……」
「エフェリアお姉様、オルディアお兄様……どうかしたんですか?」
「え? ああ、クラリア、別になんでもないよ。というか、私達もプレゼントを渡さないとね」
「あ、うん、そうだね。クラリアが喜んでくれると良いけれど……」
エフェリアお姉様とオルディアお兄様が、他のお兄様方を見て何かを話していたので、私は二人の傍に行ってみた。
すると二人は、焦ったような表情をした。これは良くなかったかもしれない。まるでプレゼントを催促するような形になってしまった。
「私はこれだよ?」
「これは、髪飾りですか?」
「うん。クラリアに似合うと思って」
「ありがとうございます。すごく嬉しいです。つけてみてもいいですか?」
「もちろん」
エフェリアお姉様からは、髪飾りをもらった。
一輪の花を模した髪飾りは、とても可愛らしいものだ。私はそれをすぐに髪につけてみる。
とても嬉しいプレゼントではあるが、果たして私に似合うものなのだろうか。そこだけは少し、心配であった。
「ど、どうでしょうか?」
「可愛いよ、クラリア。いや、我ながらいい選択だったと思っちゃうね」
「……さてクラリア、次は僕のプレゼントだ」
「これは……手鏡ですか?」
「ああ、丁度良いかもしれないね。それを使って、見てみるといい。エフェリアのプレゼントがよく似合っているから」
オルディアお兄様からのプレゼントは、手鏡であった。私の手に収まる程の大きさで折りたためるようになっていて、持ち運びしやすいもののようだ。
確かにこれは、今の状況にとても良い。恐らくエフェリアお姉様とオルディアお兄様は、示し合わせていたということなのだろう。
それを理解した私は、笑顔を浮かべながら手鏡を開いてみた。するとそこには、髪飾りをつけた私が映っている。
「ありがとうございます、オルディアお兄様……エフェリアお姉様からもらった髪飾り、私でもなんだか可愛らしくしてくれますね」
「……いやいや、クラリアは元々可愛いよ」
「オルディアの言う通り、クラリアは自慢の妹だし」
「ふふっ、それは間違いないですね」
「ええ、正しく」
「……考えるまでもないことだ」
私の言葉に対して、お兄様方は嬉しい言葉を返してくれた。
今日という日は、本当に良い日だ。私は改めて、そう思うのだった。




