日常編7 長兄への聞き込み(オルディア視点)
僕とエフェリアは、アドルグお兄様の部屋に来ていた。
ウェリダンお兄様、イフェネアお姉様に続いて、僕達はヴェルード公爵家において最も過激ともいえる人と対峙することになった。
二人がああだった以上、アドルグお兄様が過度なプレゼントを用意していない訳がない。そう思って、僕とエフェリアは部屋までやって来た。
「アドルグお兄様、こんにちは。少し聞きたいことがあるのですが、いいですか?」
「もちろん、構わない。しかしオルディア、その目はなんだ? 俺に疑いでも向けているような目だが……」
「アドルグお兄様、私達はクラリアの誕生日プレゼントについて聞きに来たのです。実は悩んでいて、被ってもいけないからお兄様方のプレゼントを参考までに聞いておきたくて……」
「ほう……」
エフェリアからの質問に、アドルグお兄様は笑みを浮かべた。
クラリアの誕生日、それは当然のことながらめでたい日だ。だから自然とそういう表情になったのだろう。
それは自体は、別に良い。しかし、こうやって舞い上がるということは、誕生日プレゼントにも気合を入れていそうだ。益々心配になってくる。
「我が妹が生まれた祝福するべき日に対して、お前達も色々と考えているということか」
「まあ、そうですね。ただ、僕達は誕生日プレゼントを決めかねていて、それでアドルグお兄様がどういったものを予定しているのか聞いておこうと思いまして」
「なるほど、要件は理解した。教えることも問題はない。しかしその前に一つ言っておくことがある。あまり気負う必要などはない」
「え?」
アドルグお兄様の言葉に、僕は思わず驚きの声を出してしまった。
エフェリアも目を丸めている。僕達は思ってもいなかったのだ。アドルグお兄様から、そのような言葉をかけられるなんて。
「クラリアが生まれた日は、確かに大切な日だ。それを祝いたいというお前達の気持ち――失敗してはならないという焦りは理解できる。だが、そうやって気負っていてはクラリアも喜ぶに喜べないものだ」
「それは……」
アドルグお兄様の言っていることは、もっともだった。
確かに僕達には、焦りがあったといえる。ヴェルード公爵家で迎えるクラリアの初めての誕生日、失敗してはならないと思っていた。
しかし、そのことにとらわれ過ぎていたのかもしれない。緊張して心配して、それで本当にクラリアの誕生日を祝えるのだろうか。
少なくともアドルグお兄様から、僕達はそう見えなかったのだ。クラリアの誕生日で一番大切な祝福の気持ちを、僕達は思い出すべきなのだろう。
「アドルグお兄様、そうですよね。僕達は色々と考えすぎていたのかもしれません」
「クラリアの誕生日、いいものにしたいって思っていましたけれど……そうじゃなくて、今の私達は失敗を恐れてしまっているだけだったのですね?」
「ふっ、それがわかったのならば、俺から言うことはない」
例え何か失敗があったとしても、それも一つの思い出になるだろう。僕達はただ祝う気持ちを持って、クラリアの誕生日に臨めば良いのだ。
そうやって考えてみると、体が軽くなっていた。やはり僕達は、クラリアの誕生日に対して緊張してしまっていたのだろう。
「……所で、アドルグお兄様の誕生日プレゼントは何なのですか?」
「む?」
「ありがたい言葉をかけていただきましたが、それでも聞いておこうと思いまして。せっかくこうして訪ねて来た訳ですから」
「あ、それはそうだね。アドルグお兄様、教えていただけませんか?」
「……」
僕とエフェリアからの言葉に、アドルグお兄様は沈黙した。
その反応は怪しい。僕達は顔を見合わせる。もしかして先程の言葉は、真意ももちろんあったのだろうが、何かを誤魔化すためだったのではないか。そんな考えが頭を過ってきた。
「……あ、オルディア。机の上を見て、あれ地図だよ?」
「地図? そういえば、ウェリダンお兄様も同じようなものを……まさかとは思いますけれど、別荘でも建てようなんて思っていませんよね?」
「待って、オルディア。この地図、島に目印がつけてあるよ?」
「島に目印……まさか、この島丸ごと買い取ろうとしているとか?」
「……」
僕からの指摘に、アドルグお兄様は目をそらした。
反応的に、図星だったということだろう。アドルグお兄様は、島一つをクラリアにプレゼントしようとしていたのだ。
「島を買うなんて、一体いくらかかると思っているんですか? やり過ぎですよ……」
「ふっ、クラリアの誕生日を俺は今まで祝ってこれなかった。その日々から考えれば、島の一つや二つくらい安いものだ」
「いや、駄目ですからね? 強行しようものなら、僕から父上や母上に進言しますよ?」
「そもそも、島なんかもらっても嬉しくないと思うんですけど……」
アドルグお兄様は、僕達にあれ程立派なことを言っておきながら、滅茶苦茶気負っているようだった。
今までの分まで祝うなんて、それこそ焦り過ぎだろう。僕達に指摘できたのに、どうしてそうなってしまうのか、まったくわからない。
ともあれアドルグお兄様を止めなければならない、僕とエフェリアは、しばらくの間説得に励むのだった。




