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妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?  作者: 木山楽斗
日常編

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日常編5 兄への聞き込み(オルディア視点)

「クラリアへの誕生日プレゼント、ですか?」

「ええ、ウェリダンお兄様が何を予定しているのか聞きたくて……ほら、被るとまずいじゃないですか」

「なるほど、それは確かにそうですね」


 僕の言葉に、ウェリダンお兄様はゆっくりと頷いた。

 しかしその視線からは、幾分かの疑念のようなものが感じられる。ウェリダンお兄様は鋭いので、僕とエフェリアの訪問の意図に気付いているのかもしれない。

 ただ、それならそれで別に構わない。僕達の目的は、過度なプレゼントの抑制だ。ウェリダンお兄様が意図を見抜いているならば、とりあえず釘は刺せたことになる。


「……先に言っておきましょうか。僕は別に、高価過ぎるものをプレゼントしようなどとは、思っていませんよ」

「え? そうなんですか? あれ? そもそも、なんでそれを……」

「エフェリア、流石に僕でもわかりますよ。今までお二人には、何度もそういった旨のことを言われてきましたからね」


 ウェリダンお兄様は、いつも通りに笑みを浮かべていた。

 だがその直後に、少し真剣な表情を見せる。それはクラリアの誕生日に対して、何か並々ならぬ思いがあるということなのだろうか。


「ウェリダンお兄様は、どのようなプレゼントを予定しているのですか? 参考までに聞かせてもらいたいと思っています。実の所、プレゼントに関して僕達は悩んでいまして……」

「おやおや、そちらも本当ではあった、ということですか。まあ、お二人にとっては初めての下の子へのプレゼントになりますか……」

「そうですね。まあ、エフェリアは僕にプレゼントしてくれたことはありますが……」

「うん、それと今回は違うかな……オルディアは弟という感じではないし」


 ヴェルード公爵家の中で、僕とエフェリアは最年少だ。下の子へのプレゼントということは初めてで、定石というものがよくわかっていない。

 もちろんそんなに深く考えるようなことではないのかもしれないが、そこは兄や姉になった者としての見栄もある。できることなら、最高のプレゼントを贈りたいものなのだ。


「僕のプレゼントはこれですよ」

「これって……双眼鏡、ですか?」

「ええ、そうです」


 僕達の質問に対して、ウェリダンお兄様は双眼鏡を取り出した。

 それを見て、僕とエフェリアはほとんど同時に部屋のある場所に視線を向ける。今お邪魔しているウェリダンお兄様の部屋には、双眼鏡が飾ってあるのだ。それは確か、アドルグお兄様からのプレゼントだったはずである。


「二人も知っての通り、僕はかつてアドルグ兄上からあれを贈られました。僕にとってそれは、とても嬉しいものでした」

「それをクラリアにも、ということですか?」

「ええ、クラリアにも色々と目を向けてもらいたいと、思っていましてね。幸いにも、彼女は自然などが好きですから。それを見渡せる双眼鏡などは、適切かと思いましてね」


 ウェリダンお兄様は、思っていた以上にきちんと考えているようだった。

 お兄様方なら過度なプレゼントを贈る。それは僕達の杞憂だったのかもしれない。少なくともウェリダンお兄様は違ったのだ。


「ウェリダンお兄様、僕達は勘違いしていました。過度なプレゼントなどを贈るのではないかと……」

「あれ? ウェリダンお兄様、これは地図ですか?」

「うん?」


 エフェリアの言葉に、僕はふとウェリダンお兄様の机の上にあるものを見た。

 そこには、地図が広げてある。赤い丸がつけてあり、その地点に何かがあるのだろうということが、すぐにわかった。

 ただそこは、何の変哲もない平原である。強いて言うならば、周囲は自然に囲まれていて見渡しが良さそうなくらいか。


「……ウェリダンお兄様? ここに何かあるのですか?」

「……さて」


 僕からの質問に、ウェリダンお兄様は笑みを浮かべた。

 その笑みから、僕はある可能性に思い至る。もしかしてウェリダンお兄様は――


「まさか、ここに別荘を建てようなんて、思っていませんよね?」

「はははっ、そんなことはありませんよ……ええ、ありませんとも」

「あ、オルディア、これは多分、図星だよ?」

「ウェリダンお兄様?」

「別荘なんて、そんな大それたもの建てるつもりはありませんよ。ただ、小屋とか高台くらいならと思ったまでです」

「いや、それも駄目ですよ。クラリアだって困りますから……」


 ウェリダンお兄様は、やはり大それたことをしようとしていた。誕生日プレゼントとしては双眼鏡だが、それを活かすための建物を作ろうなんてやり過ぎだ。

 そんなことをしても、クラリアは委縮してしまうだけである。聡い彼女が事情を理解しないなんてこともないだろうし、こんなことはやめておいた方がいい。

 僕とエフェリアは、そうやってウェリダンお兄様をしばらくの間説得するのだった。

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