日常編4 誕生日プレゼントは(オルディア視点)
「ねえ、オルディア、クラリアの誕生日プレゼントって、何がいいと思う?」
「ああ、それは丁度僕もエフェリアに聞きたかったことだね」
ある日の夜、エフェリアは僕に質問を投げかけてきた。
クラリアの誕生日、それはとても重要な日だ。その日は既に、盛大に祝われると決まっている。内々にはなるが、誕生日パーティーが催されるのだ。
その場で僕達は、クラリアにプレゼントあげることになる。プレゼントは当然、クラリアが喜ぶものをあげたい所だ。
「オルディアも聞こうとしていたの? それなら聞いても無駄ってこと?」
「まあ、そういうことになるかな……正直に言って、エフェリアのことを頼りにしていたんだ」
「私を? どうして?」
「端的に言ってしまえば、同性だからだね。年頃の女の子の欲しいものとなると、僕よりもエフェリアの方が詳しいと思っていたけれど……」
僕の言葉に対して、エフェリアは苦笑いを浮かべていた。
僕に聞いた時点で明白ではあるが、エフェリアにもそういったことはわからないらしい。
「オルディア、私がそう言ったことに詳しいと思う? 大体、私がその頃何が欲しかったなんてことは、オルディアも知っていることでしょう?」
「それはそうだね……なるほど、これに関しては僕が間違っていたか」
「まあ、それを言うなら私もかも。私にわからないそういったことを、オルディアがわかる訳がないよね……」
僕とエフェリアは、ずっと一緒に過ごしてきた。だから、お互いのことはよく知っている。
それなのに、お互いに頼ればなんとかなると思っていた辺り、僕達は冷静に判断できていないのかもしれない。
「……少し、整理をするとしようか。クラリアは優しい子だ。どちらかというと、穏やかな性格だね? おしゃれはどうだろうか? イフェネアお姉様に、今習っている所かな? 化粧品の類は、プレゼントとしてどうだろうか?」
「そうだね……まあ、嫌いということはないと思うよ。でもクラリアは、あまり高い物は望んでいないような気がするから、そこが心配かも」
「なるほど、それは確かにそうだ。でも化粧品でも安価なものはあるけれど……」
「クラリアはなんとなく、化粧品には高価なイメージを抱いていると思う」
「そうか……」
整理も兼ねて僕が案を出してみると、エフェリアからは建設的な意見が返ってきた。
確かにあまりに高価なものを渡したら、クラリアは喜ばないだろう。逆に委縮させてしまうかもしれない。
化粧品などは、クラリアが暮らしていた村などでは馴染みがないものだし、これはまだ適切ではないだろう。
「それなら本なんかはどうだろうか? 魔王を討伐する勇者の物語なんかは、案外良いように思えるけれど……」
「それはそうだね。クラリアも多分、好きそう。恋愛物なんかも、いいかもしれない……あ、でも読めるのかな? 難しい表現とかもあるだろうし……」
「そうか。確かにそうだね。僕達のように幼少期から教育を受けていないクラリアには、まだそういった本は早いか。児童書の類もあるけれど……」
「流石にそれはクラリアでも、いい気分はしないような……もっと小さい子向けの本だし」
本という選択肢は考えられるものの一つだ。巷で流行した物語などならば、大抵の場合は楽しめるだろう。
しかしクラリアの年齢や境遇に沿った本というのは、中々に難しいものだった。別に僕達自身が読書家という訳でもないため、適切な選択はできないような気がする。
「こういったことは、ウェリダンお兄様の領分かな? そうだ、化粧品に関してはイフェネアお姉様の領分ともいえる……」
「あ、そうだね。二人なら私達よりも詳しいだろうし、いい感じのものを選びそう……というか、被りは避けないとね?」
「被りか……それならそもそも、アドルグお兄様も含めて皆の意見を聞いてみる方が良いのかもしれないね?」
「それはそうかも……でも、お兄様達のプレゼントって……」
僕の提案に、エフェリアは表情を少し変えた。それを見て、僕も思い出す。今までお兄様方からされたプレゼントの数々のことを。
それらのプレゼントは、なんというか度を越えていた。高価過ぎるものをプレゼントされたこともあったし、色々と大変だった覚えがある。
「……」
「……」
僕とエフェリアは、顔を見合わせていた。
クラリアがヴェルード公爵家に来て初めての誕生日、お兄様方は気合を入れるはずだ。その気合の入れ方というものも、きっと度を越している。それはきっと、クラリアにとっては喜ばしいことではないだろう。
「……止めた方がいいかもしれないね?」
「うん、いいかもしれないというか、絶対止めた方がいいよ。お兄様方だもん。碌なことにならない……は、言い過ぎにしても、大変なことになると思う」
エフェリアの言う通り、こういった時のお兄様方は大変なことをしがちだ。
二人の令嬢などの件の時にはなんだかんだそれらしい対応をした訳だが、今回のような場合はそうならないだろう。現状、特に思い止まるような理由はないからだ。
とりあえず僕達が、釘を刺しておく方が良いだろう。それで止まってくれるかは微妙な所だが、何もしないよりはマシだ。すぐに行動しなければならない。




